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サウロン伯爵

 だがこれを忌々しく見ていたものがあった。それはあのジョーカーの幹部だ。いつの間にか、奴は建物の屋根の上にいた。俺はその邪悪に満ちた気配と強大な力を感じ取って、奴のいる方に振り返った。

 黒いマントに中世の貴族のような服を着て、左手にはステッキを持っている男だ。鋭い眼光を放ち、周囲を畏怖させるオーラをまとっている。一目見ただけで「ただ者ではない!」と感じた。

 俺が「何者だ!」と叫ぶ前に、奴はいきなり右手に黒い炎の塊を発生させて、それを投げつけてきた。それは恵子と美智代に向かっていた。2人を抹殺するつもりだったのだ。


「危ない!」


 俺は声を発するのが精一杯だった。奴の黒い炎が速すぎて間に合わなかったのだ。


「バーン!」


 その黒い炎は美智代の胸を貫いた。彼女が恵子をかばって前に出て盾になったのだ。美智代は胸に黒く焼き焦がれた穴をあけられてその場に崩れるように倒れた。


「ミッチ!」


 恵子がすぐに抱き起した。だが美智代はもう虫の息だ。


「しっかりして! ミッチ!」

「ケイ・・・。私はもうダメみたい。でもよかった。あなたを守れて・・・」


 そこでミッチはこと切れた。俺は奴に向かって叫んだ。


「きさま! なんてことをするんだ!」

「ふふふ。我はジョーカーの幹部。サウロン伯爵だ。裏切り者は死あるのみ。」


 そこで俺は奴がジョーカーの幹部であり、恐るべき力を持っているのを知った。


「我がここに来たからには貴様らも抹殺してくれるぞ!」


 サウロン伯爵は右手から次々に黒い炎を放ってきた。後から知ったのだが、それは「ヘルファイヤー」という魔法だそうだ。これにやられると回復魔法も効かない。これではみんなやられてしまう・・・。

 だが急にあたりに結界が張られた。それがヘルファイヤーを防いでくれていた。


「私がみんなを守るわ!」


 ミキがタイミングよく来てくれたのだ。これで後顧の憂いはない。俺は久しぶりに大きな怒りに燃えた。ヒーローものにはよくあることとはいえ、せっかく元に戻った美智代が殺されたことに・・・。


「許さん! トォーッ!」


 俺はジャンプしてサウロン伯爵のそばに降り立った。キックやパンチを繰り出していくが、奴はステッキで悠々と防いでいる。さすがは幹部だけのことはある。だが奴の方も俺を叩きのめすほどの力はない。俺がさらに間合いを詰めて攻撃しようとすると、奴はさっと後ろに下がった。


「ラインマスク! 勝負はお預けだ!」


 サウロン伯爵はらちが開かないと見たのか、撤退しようとする。だいたい幹部というのはこういう輩が多い。思い通りにならないと放り出してしまうのが・・・。前世でもそうだった。一つのプロジェクトに課を挙げて全力で取り組んでいたのに上からの方針、つまり重役の一声で急に中止になることが・・・今はそんなことはどうでもいい。美智代を殺した奴をこのまま逃がすことはできない。


「待て!」


 俺は叫ぶが、サウロン伯爵は右手で周囲に爆発を起こして煙幕を張った。


「逃がさん!」


 俺はそこに飛び込んだがサウロン伯爵の姿はない。姿を隠すなどマジシャンでもできるのだが、そのタネが俺には全然わからなかった。だから奴がどんなトリックでどこに隠れたかなどわかるはずはない。煙が晴れてくると、


「覚えているがいい! 次に会う時は貴様の最期だ!」


 捨てセリフが聞こえてきた。勝手な奴だ。もっともこれもヒーローものの定番ではあるが。


 「くそっ!」


 俺は悔しそうに右手の拳を強く握っていた。これもまた定番である。


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