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蜂怪女の正体

 ホールの中にはスレーバーが歩いていたが俺たちは怪しまれることなく、2階に上がることができた。広間に行くように指示されていたが、俺はハニーレディに会わねばならない。廊下をまっすぐに行けば彼女のいる奥の小部屋に行ける。幸い、スレーバーの姿はない。

 俺は相方に手で合図して奥の小部屋に走り、さっとドアを開けて中に入った。


「あなたたち、何して・・・」


 驚いて騒ごうとするハニーレディの口を俺は手でふさいだ。


「怪しい者じゃない。少し君と話がしたいだけだ。」


 俺はそう言ってみたものの、いきなり部屋に入ってそんなことを言う奴は十分怪しいだろう。少しでも信用させるために俺はスレーバーの覆面を取って素顔をさらした。するとハニーレディは俺の顔を覚えていたようだ。彼女がわかったという風に大きくうなずいたので、口をふさいでいた手をどけた。


「あなたはステージに上ってきた・・・」

「ああ、そうだ。正義の仮面、ラインマスクこと相川良だ! そしてこっちは勇者ノブヒコだ。」

「助けに来てくれたの。」


 彼女は「相川良」という名前を聞いても妙な反応をしなかった。この世界の記憶を消されて、前世の記憶のみを持っているからだ。俺はこの異世界でやっとまともに相川良を名乗れる相手を見つけた・・・ということはどうでもいい。


「ああ、そうだ。君は嫌々ジョーカーに従っているんだろう。」

「ええ・・・」


 ハニーレディは悲しげな顔をした。かなりのことをやらされてきたようだ。俺は彼女が前世に俺と同じ世界にいたかを確かめようとした。


「ところで君は前世の記憶を持っているだろう。」

「ええ、そうよ。私は泉恵子。最期はダンプカーに親友とともにひかれて死んだみたい。」

「そうして君はこの世界に生まれ変わってきたんだ。」

「そうみたい。でもこの世界での記憶が全くないの。」

「君がジョーカーにつかまり、この世界での記憶を消されて改造されたんだ。」

「ええ。でもこの異世界とは違う前世の記憶が残ったの。前世ではピンクレディーの熱烈なファンだったの。歌も振りつけもできたのよ。」

「それをジョーカーに目をつけられたんだな。」

「ええ、でも一人じゃないの・・・」

「一人じゃない?」


 確かにピンクレディーは2人組だ。ハニーレディはもう一人、別の人とともに転生してきたというのか・・・。


「そうよ。池野美智代、ミッチと呼んでいたわ。彼女が私と一緒にダンプカーにひかれたの。前世ではよく彼女と一緒にピンクレディーの振り付けをして歌っていたわ。私は親友のミッチとこの異世界に転生できた。そしてここでも仲良く暮らしていたみたい。そんな時、ジョーカーに2人とも捕まった。今の世界の記憶を消されたけど、前世でも仲良しだったことがわかってうれしかった。でも・・・」


 恵子は悲しそうな顔をした。


「ミッチは最後までジョーカーの言うことを聞くのを拒んだわ。それで脳改造されてしまった。私は怖くてジョーカーに従うしかなかった・・・」

「もしかしてあの怪人は・・・」

「ええ、そうよ。ミッチよ。蜂怪女にされてしまったの。」


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