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救出される

 黒い手術着の男たちは躊躇なく、ドリルで俺の頭に穴をあけようとしていた。


「やめろ! やめるんだ!」


 俺は大声でわめいた。ヒーロー作品の場合、こんな時は誰かが助けてくれて・・・そんな淡い期待があった。すると本当にドリルが急に停まり、照明が消えた。黒い手術着の男たちが右往左往して騒ぎ出した。


(停電か?)


 俺がそう思っていると、いきなり部屋のドアが開いた。この場合は大体、俺を助けに来てくれた味方の人だ。そう決まっている。


(いよいよヒーローの登場か!)


 そう思ってワクワクして見ていると、飛び込んできたのは濃紺のジャケットを着た、くたびれた中年の紳士だった。


「誰?」


 期待外れに失望感が大きかった。だがその紳士は右手に持った短い棒を男たちに向けて何やら唱えた。すると男たちはへなへなと倒れた。魔法か何かで気を失わせたようだ。


(やるな!)


 この際、このピンチを救ってくれるなら誰でもよかった。前世での俺の年齢と近いようだが、その年で悪者と渡り合うとは・・・よく頑張っている。

 今度はその紳士はその棒を俺に向けて何やら唱えた。すると俺を拘束していた鎖が吹き飛んだのだ。これで俺は自由になった。すぐに身を起こすとその紳士は声をかけてきた。


「大丈夫か?」

「ええ。でもあなたは?」


 俺は尋ねた。もしかしたらかっこいいヒーローが変装してきてくれたのかも・・・。だが返事は予想した通りのものだった。


「私は魔法使いのカワミだ。君を助けに来た。」

「どうして俺を?」

「話は後だ。それよりここを脱出しよう。ここはジョーカーの基地だ。危険なところだ。」


 俺はうなずくとその紳士、カワミさんの後に続いて手術室を出た。廊下は照明が消えて暗かったが、カワミさんが懐中電灯のように棒の先を光らせてくれたおかげで、転ぶこともなく先に進めた。

 だがやがて天井の照明がついた。すると耳をつんざくような警報が鳴り響き、廊下に全身真っ黒な姿で目だけ光らせた男たちが出てきた。俺たちを捕まえようとしてくる。こいつらを見て俺は思った。


(こいつらは悪の組織の戦闘員か。今まで見た中でも一番醜悪だな。)


 組織の末端の雑魚のようだが、それでも十分に不気味で強そうだ。そんな戦闘員をカワミさんは棒を振るって次々に倒していった。なかなかの強さだ。これならカワミさん一人で悪の組織を壊滅させられるんじゃないか・・・と思えるほどだった。


 さらに進んでいくと大きなハッチがあるところに進んだ。そこに数台の見慣れない機械があった。ハンドルがあり、シートがあり、それはまるでバイクだ。ただ徹底的に違うのはタイヤがない。その部分は平らな板になっているのだ。


「ここは出口だ。このホバーバイクに乗って逃げなさい。」

「あなたは?」

「スレーバーが追ってくる。私はここで食い止める。君が先に逃げるんだ。私は後から行く。」


 俺はうなずいた。


(そうか。スレーバーと言うのか。あの戦闘員は。)


 などと思いながらそのバイクにまたがった。そして始動・・・と思ったがどう動かせばいいかわからない。考えてみたら俺は原付の免許しかもっていなかった。これを乗りこなせるのだろうか・・・。


「ハッチを開けるぞ! 君の思念をバイクに伝えるんだ。」


 カワミさんはそう言ってくれた。それで俺は念じてみた。


(動け! 動け!)


 するとホバーバイクが浮き上がった。なんとか動かせそうだ。


「この先の道を南に行くんだ。ライムの町に行ける。そこにアキバという男がいる。彼なら君を助けてくれるはずだ。」

「わかった。」


(ライムの町? ファンタジーに出てきそうだな。どんなところだ? ライムがたくさん実っているのか?)と思いながら、俺はホバーバイクで発進させた。


「す、すげえ!」


 ものすごいスピードで地面すれすれをすっ飛ばしていく。初めての異世界、未知の世界に俺は飛び出した。


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