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手術台の上

 俺はふいに目を開けた。少しの間、眠っていて夢を見ていたようだ。それにしても心躍る夢だった。憧れのラインマスクになって戦うとは・・・。まだその興奮が冷めやらない。

 しかしそれはそれとして今の現実はどうだ・・・俺はあおむけに寝ていて目の前がやけにまぶしかった。なぜここにいるのだろうと俺は記憶をたどってみて、その前のことを思い出した。確か半グレ集団の奴に胸を刺されて死んだはずだった。だとすると・・・。


(ここは天国か?)


 いや違う。俺は手術台に乗せられている。手足の自由が利かない。顔を向けると鎖のようなもので拘束されていた。そして俺の顔を黒いマスクを付けた男の顔がのぞき込んだ。その男は俺の反応をじっと観察しているようだった。その男の他にも周囲から真っ黒な手術着を着た男たちが俺を見ていた。


「なんだ! お前は!」


 だがその男は答えない。代わりにあの低い声が聞こえてきた。


「やっと目を覚ましたか。ヤスイ・ソウタ。我がジョーカーにようこそ。ハッハッハ・・・」


 笑い声が響き渡った。俺は唖然としていた。


(ヤスイ・ソウタ? 誰だ? 俺は山田学だ。誰と間違えているんだ。それにジョーカー?一体なんだ?)


 普通ならパニックになるだろう。だが俺はそうならず、ただ多くの疑問が頭を駆け巡っていた。この状況(ステュエーション)、どこかで・・・。

 俺が何の反応を示さないので、その低い声の持ち主には意外だったようだ。


「そうか。お前の記憶をまっさらにしたのだった。だからわからないのだな。よかろう。儂は秘密組織ジョーカーの首領だ。お前は我がジョーカーに拉致されたのだ。」


 声の主は秘密組織の首領だった。それにしてもゲルト団の首領の声にそっくりだ。悪の組織のトップは皆、あんな声になってしまうのか・・・という疑問はさておき、俺の身に危機が迫っていることは確かだ。だがさっきまでの夢が続いているかのように、俺はヒーローになった気分が抜けない。ここで弱気は禁物だ。あくまで抵抗してやる・・・と固く心に決めていた。


「なんだと! 俺を放せ!」

「それはできぬ。すでにお前の過去の記憶も消した。お前は過去のお前ではないのだ!」


(過去の記憶を消した? でも覚えているぞ。はっきりと。あの半グレの奴に刺されるまで。これはどういうことなんだ?)


 俺はそう思った。その時、一つの考えが頭に浮かんだ。


(もしかして俺は生まれ変わったんだ。ヤスイ・ソウタして、前世の記憶を心の奥に残したままで。だがこの連中に拉致され、生まれ変わってからの記憶を消されたんだ。だから前世の記憶が出てきたんだ。)


 間違いかもしれないがそう思うと辻褄が合うような気がした。首領は俺を洗脳するかのように話し続けていた。


「もうお前はヤスイ・ソウタではないのだ! 新たにジョーカーの一員になったのだ!」

「いや、お前の仲間になった覚えはない! 俺をここから出すんだ!」

「もう遅い! お前には改造手術が施された。その腹の中に魔法増幅装置を埋め込んだ。」


 すると急に腹の辺りに違和感を覚えた。頭を上げて見てみると腹の上にベルトのバックルのようなものが現れた。


「なんだ! これは!」

「これでお前の持っている魔法力を格段に引き上げられる。その増幅された魔法力を使って怪人になるのだ。そうだ。モチーフはバッタだ!」


 すると顔の上に3D映像が映された。ただのバッタではない。恐ろしい怪人と化したバッタ人間だ。


「いやだ! いやだ!」


 俺は暴れた。ヒーローにあこがれる俺には、こんなかっこ悪いバッタ人間なんかごめんだ!


「さあ、よく見ろ! この姿を頭に刻み付けろ! そして魔法力を使え! バッタ怪人になれるのだ!」


 俺はその映像から顔をそむけた。そんなものになる気などない。


「はっはっは。ならば脳改造しておとなしくさせようか。そうなれば意思など持たない、ただの奴隷になる。それでもいいのか?」


 首領の声が頭に響く。それも嫌だ、かといってバッタ人間はもっと嫌だ・・・俺は暴れ続けた。


「ならば仕方ない。脳改造だ。やれ!」


 首領の指示で頭の上のドリルが回った。それが頭に近づいてくる。絶体絶命のピンチだ。一度死んではいるが・・・。


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