握手
俺はホバーバイクに乗って戻ってきた。レースはとうに終わっており、俺はリタイヤ扱いになっていた。
「仕方ないか・・・」
俺はため息をついてピットに戻ってきた。すると真っ先にミキが飛び出してきた。彼女は心配と帰ってきたうれしさを隠しきれないままに俺に食って掛かった。
「どうしたのよ! みんなずっと待っていたのよ!」
「ちょっとドジをしたんだ。君にも心配をかけたね。」
俺は微笑んでそう答えた。するとミキの反応は相変わらずだった。
「心配なんかしてないわ! あんまり遅いから気になっただけよ。」
プイと横を向いた。その後ろからおやっさんたちも出てきた。
「今までどうしたんだ? ぶっちぎりの優勝だったはずなのに・・・」
「すいません。ちょっと道を間違えまして・・・」
俺はそう言い訳した。ジョーカーの罠にはまって戦っていた・・・などと言ったら長々と説明しなければならないだろう。どうせ負けたんだし、これが一番簡単に済む。
「そうか・・・それは残念だ。」
「すいません。そそっかしくて。」
「いや、いいんだ。今回はお前の調子を見るだけだったから。無事に帰ってきたのだからよしとしよう。」
おやっさんはそう言ってくれた。やはりいい人だ。次はきちんと優勝しよう・・・と思った。
その時、コースの方から歩いてくる人の影を背中に感じた。振り返って見ると、それはゴウだった。彼は怖い顔をしてゆっくり俺の方に近づいてきた。
(嫌味でもいいに来たのか、勝ったのを自慢しに来たのか・・・。)
俺は身構えた。だがゴウはいきなりこんなことを言い出した。
「俺は満足してない!」
「えっ?」
優勝したのに満足してないとは贅沢な奴だ。ゴウは言葉を続けた。
「勝負に勝ったが、走りはお前に及ばなかった。2週目からお前についていけなくなっていた。」
よくはわからないが、ゴウが俺を認めてくれているのは確かなようだ。そして彼はさらに言葉を続けた。
「またレースに出てこい! 俺と真正面から勝負だ! 今度はお前を追い抜く!」
「望むところだ!」
俺はそう返した。ゴウは俺に右手を差し出した。その顔には清々しい笑顔があった。さすがは俺のライバルになろうとしている男だ。スポーツマンシップにあふれている。俺も右手を出してしっかり握手した。やはりライバルとの関係性はこうでなくてはならない。切磋琢磨して自らを高めるというヒーローには重要なことだ。おやっさんたちも拍手して俺たちを讃えてくれた。
とにかくジョーカーが俺をまだ狙っているのはわかった。気を引き締めなければ・・・と思いつつ、不安は付きまとう。だがこんな時は・・・。
俺は背筋を伸ばして胸を張り、少し大股で腰に手を当てた。これぞヒーローのパワーポーズだ。それで自信がみなぎってきた。
(そうだ! 向かっている敵があってのヒーローなのだ! ジョーカーよ! どこからでもかかってこい!)
俺は何かワクワクする感情を抑えきれなかった。




