表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/182

サーカス団の異変

 おやっさんたちはワタルをアキバレーシングの店に連れて行ったソファに座らせた。そしておやっさんは奥に向かって声をかけた。


「おい。ロコ。ワタル君にジュースでも持ってきてくれ!」

「はーい!」


 奥から声が聞こえた。おやっさんはやさしくワタルに話しかけた。


「心配することはないよ。おじさんたちにもっと詳しいことを聞かせてくれないか。」


 ワタルはまだ不安げだったが少しずつ話し始めた。


「昨日、サーカス団が帰ってきたんだ。だから僕は皆に会いに行った。でも何だか冷たいんだ・・・」

「久しぶりだからそう感じたじゃないか?」


 ゴウがそう言ったが、ワタルは大きく首を振った。


「いや、違うんだ。父さんや母さんは、いつもなら僕を抱き上げて『留守の間はどうだった』とか、『元気だったか』とか嫌になるくらい聞いてくるんだ。それに旅先での話もいっぱいしてくれる。でも・・・」

「そうじゃないんだね。」

「うん。僕に会っても声もかけてくれない。表情を変えず、ただ冷たい目で僕を見ているんだ。僕が話しかけても答えてもくれない。」

「そいつは妙だな。」


 おやっさんは首をひねった。ワタルはさらに話し続けた。


「それも父さんや母さんだけでもないんだ。他の団員のお兄さんやお姉さんも同じようなんだ。僕が遊びに行けば、誰でも相手をしてくれるのにそうじゃない。青い顔をしてまるで人形のように表情がなくなっているんだ。もちろん僕が話しかけても無視さ。」

「それは確かにおかしい。」


 おやっさんは顎をしゃくった。その時、テーブルにジュースが置かれた。


「何が起こっているか、調べる必要があるな。」


 その声を聞いておやっさんは驚いて顔を上げた。ジュースを運んできたのはなんとヤマトだった。横に座っていたゴウもそれにびっくりして声を上げた。


「おまえ! いつの間に・・・」

「ははは。俺は神出鬼没さ。それよりその話に興味がある。」

「お前っていう奴は・・・」


 おやっさんはあきれたように言った。


「フリー記者だから当然さ。それよりワタル君。サーカス団の全員がおかしくなったというわけだな。」

「うん。人が変わったみたいに・・・」

「そうか。わかった。ここは俺たちに任せてくれないか。決して悪いようにはしないから。」


 ヤマトはワタルにそう言った。おやっさんもワタルに言った。


「そうだな。ワタル君。おじさんたちが調べてみる。」

「きっと本当の父さんや母さん、いやみんなを取り戻してね! 約束だよ!」

「ああ、約束する。だから信じて家で待っていてくれ。」

「うん!」


 おやっさんの言葉に安心してワタルは家に帰っていった。その後姿を見送りながらゴウが言った。


「さて、どうする?」

「決まっているさ。サーカス団を調べに行くんだ。」


 ヤマトはニヤリと笑った。


「でもなあ。『あなたは人が変わってしまいましたか?』と聞いても答えてもくれないぜ。」

「だから取材と言ってサーカス団の人たちに話を聞くんだ。何かつかめるかもしれない。」


 ヤマトは確信がある口調でそう言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ