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ライバル

 いよいよレースの日となった。森の中に作られたコースでレースが行われる。長大な距離のコースを3周するのだ。オフロードのコースと言ったところだが、ホバーバイクでは舗装された道でも石ころだらけの道でも走りは変わらない。ただ違うのはすごい砂埃が立つことだけだ。

 出るのは「ツキンカ王国杯」というレースだ。もちろんツキンカ王国というのはライムの町の属する国だ。このレースには国中はもちろん、国外から腕に覚えのあるレーサーが数多く集まる。


 俺は朝からコースに出て練習走行をした。感触はなかなかいい。困ることといえば、暗い森の中を突っ走る部分もあるので、標識がないと少し迷うかもしれないくらいだ。俺は満足してピットに戻ってきた。


「いいぞ。ソウタ。これなら優勝間違いなしだ!」


 おやっさんが大きくうなずいていた。その時、俺は背後に強い視線を感じた。


(誰だ!)


 振り返るとそこにレーシングスーツを着た男が数人立っていた。彼らもこのレースの出場者らしい。そしてその中の一人が俺に近づいた。鮮やかな青のレーシングスーツに身を包んだ長身の若い男だ。


「よく出てきたな。しかし今日は俺の勝ちだ!」


 その男は不敵な笑みを浮かべていた。ヤスイ・ソウタとは顔見知りのようだ。だがこの異世界の記憶をなくした俺にはわからない。


(こいつ、誰だ?)


 TVのヒーローものでは主人公のライバルがこんな形で登場する。だいたい勝手に「永遠のライバル」などと勝手に思い込む輩が多い。こいつも俺を見て俄然、やる気満々だ。

 俺はこのライバルらしい奴には記憶を失ったことを知られない方がいいように思った。だから適当に話を合わせるしかない。奴のライバルとして・・・。


「正々堂々と戦おう! 相川良だ!」


 俺は右手を出した。そしてこいつだけには「相川良」の名前を浸透させようと・・・。だがその男は俺の右手をはたいた。


「俺を馬鹿にしているのか! 『相川良』などとふざけた名前を名乗りやがって! お前だけはぶっ倒すからな!」


 その男は俺を強く指さしながら怒って行ってしまった。その後を他のレーサーがぞろぞろとついて行った。やはりこの世界では「相川良」という名前は鬼門なのか・・・。

 おやっさんは俺の腹を小突いて言った。


「おい、まずいぞ! あいつはシミズ・ゴウだぞ!」

「シミズ・ゴウ?」

「そんなことも忘れてしまったのか? この国一のレーサーだ。だが前のレースでお前が勝っている。だからリベンジに来たんだ。」

「そうだったんですか・・・」

「このレースには奴の取り巻きも出る。ゴウにその気がなくても、奴の取り巻きに徹底的にマークされるぞ。ああ、困った、困った・・・」


 おやっさんは頭を抱えていた。知らぬが仏というのか、俺はてんで気に留めなかった。ヒーローなら正々堂々と戦うだけだ。それよりもピットの奥が気になった。そこには・・・。


「あんな奴、たいしたことはないわ! きっと勝ちなさい!」


 ミキが腕組して出てきた。こんな時はこうやって返す。


「俺のために応援に来てくれたんだね。ありがとう。」


 するとミキはまた顔を赤らめて目をそらす。


「別にあなたのために来たわけじゃないわ。このレースを見たかっただけよ!」


 まあ、ツンデレも悪くない・・・そう思いながら俺は少し気になったことがあった。


(あの強い視線・・・あれは練習の時に、そしてその日の夜に感じていたのと同じだ。もしかして・・・)


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