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レーサー

 次の日、俺はおやっさんに連れられて町のはずれにあるレースコースに行った。もちろんアキバレーシングのメンバーもいっしょである。そこにはあの「アキバスペシャル」が運ばれていた。

 おやっさんはこれからコースに出ようとする俺に行った。


「いいか。ソウタ。ブランクがあるから無理するな。少しずつタイムを上げていけばいい。」

「任せてください! おやっさん!」


 俺は自信満々に言った。しかし本当に自信があったわけではない。ヒーローとしてはこう答えねばならないからだ。おれはおやっさんに手で合図して走り出した。


 走ってみてわかったが、やはり「アキバスペシャル」は違う。凄まじい轟音に見合うだけのパワーとスピードもっている。前世では原付の運転しかしたことがない、運動音痴の俺だが、この異世界のヤスイ・ソウタは違う。優れた運動神経と並外れた体力を持っている。そのためこのモンスターマシーンを存分に駆使し、その性能を十分に引き出している。

 1周するたびにおやっさんがタイムを計っていたのだが、そのたびに歓喜が顔に出ていた。そしてその声も遅れて聞こえてくる。


「やったぞ。ソウタ! これなら優勝間違いなしだ!」


 俺はうれしくなって、さらにタイムを縮めようとしてスピードを上げた。だが急に違和感を覚えた。


(誰かに見られている・・・)


 得体のしれないものがじっと見ている感じだった。それはジョーカーかもしれない・・・。俺は少々気味が悪くなって、次の周回でバイクを停めた。するとおやっさんが驚いてそばに寄ってきた。


「どうしたんだ? もう1周あるはずだぞ。」

「誰かに見られている気がします。もしかして奴らかも・・・」

「なんだって!」


 俺もおやっさんも辺りを見渡した。だが辺りには不審な者はだれもいない。


「気のせいか・・・」


 俺はそう呟いたが、完全にそう思っているわけではなかった。確かに何かの気配を感じていたことは確かだ。だがその時、背後に別の何かの気配を感じた。


「誰だ!」


 俺は急に振り返った。


「な、なに・・・、一体、なんなの?」


 そこにいたのはミキだった。背後から目隠しして「誰だ?」と驚かそうとしたのか、そっと俺の背後から忍び寄っていたようだ。それが急に大声を出して俺が振り向いたのでびっくりしたようだ。


「すいません。驚かして・・・」

「そうよ。びっくりするじゃない。心臓が止まったらどうするの!」


 ミキは胸を押さえてそう言った。


「今日はどうしたんですか?」

「ソウタが練習を始めると聞いたじゃない。だから見に来たのよ。」

「そうだったんですか。気にかけてくれていたんですね。ありがとう!」


 俺は少しうれしくなって笑顔でそう言った。するとミキは赤くなって横を向いた。


「ちょっと近くまで来たからよ。別にソウタのことが気になったわけじゃないのよ!」


 相変わらずのツンデレだった。俺が困った顔をしていると、おやっさんが助け舟を出してくれた。


「まあ、いいじゃないか。来週は本番のレースだ。お嬢さんも見に来てくださいよ。きっとソウタが勝ちますから。」

「ええ、いいわ。私が来たら勝つに決まっているもの。」

「じゃあ、練習の続きだ! ソウタ。もう一走りして来い!」


 俺はまたホバーバイクを走らせた。やはり何かの視線を感じながら・・・。


 その時ははっきりとわからなかったが、やはりジョーカーの怪人が陰から見ていたのだった。それはレースの日に明らかになるのであった。


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