ティラノ怪人
ジョーカーの秘密基地では新たな怪人が生み出されていた。まだ完成したばかりで手術台に寝かされている。そこにサウロン伯爵が入ってきた。
「ウィース!」
科学者たちが右手を上げて敬礼する。それにサウロン拍手は答えた。
「諸君。新しい怪人の出来はどうだ?」
「完璧な出来です。サウロン伯爵。これまでにないパワーを持っています。」
「うむ。それでは起動しろ!」
科学者たちは装置のスイッチを入れた。すると怪人は目を覚まし、四肢の拘束鎖をいとも簡単に引きちぎって身を起こして立ち上がった。
「グオゥグオゥグオゥ!」
その怪人はいきなり吠えた。全身硬いうろこに覆われて、がっちりした四肢に鋭い爪、顔はトカゲに似てその口には鋭い歯が並び、長くて太い尻尾を持っていた。その怪人は太古の昔、この異世界の王者と君臨していた「ティラノソー」という恐竜をモチーフとしていた。
その怪人にサウロン伯爵が呼び掛けた。
「ティラノ怪人よ! よくぞ、目覚めた! フフフ・・・」
「グオゥグオゥグオゥー!」
ティラノ怪人はまた吠えた。力がみなぎっている感じだった。それは今までの怪人とはけた違いのパワーを持っていることが想像できた。サウロン伯爵はうなずきながら満足そうにその怪人を眺めていた。
ティラノ怪人を苦労して作り上げたのは重要な作戦のためだった。それはまさに魔法力生成所襲撃であり、これまでも何度も試みたがいずれもが失敗だった。その大きな要因は周囲に強力な結界が張り巡らされていたからだった。
今、基地の外にそれと同じ結界を張り巡らせていた。これからティラノ怪人による結界破壊の実験が始まる。その光景は監視カメラを通じて基地の司令室のモニタに映し出されていた。サウロン伯爵がモニタ越しに命令した。
「行け! ティラノ怪人! 結界を破れ!」
いよいよ実験が開始された。ティラノ怪人は結界に向かって進み、その直前で大きく体を捻った。するとその太い尻尾がうなりを上げて飛んできた。それは結界にぶつかり、「バシッ!」と鋭い音を立てて火花を散らした。その衝撃は結界全体に広がり、やがて粉々に砕け散った。
「うむ。成功だ。ものすごい威力だ!」
サウロン伯爵は満足げにおおきくうなずいた。その後ろでは計測機器の数値を見ていた科学者が次々に数値を読みあげていった。どれも想定値を超えている。そして最後にサウロン伯爵に報告した。
「・・・これならば魔法力生成所の結界を破ることができます。」
「そうか。これで作戦準備はすべて整った。早速、明日正午に開始だ!」
サウロン伯爵がそう言うと、隣の部屋が騒がしくなった。そこは司令室からいくつかの人影がシルエットとして透けて見えていた。それに怪しげな気配と殺気も漂っている。それらの人影は明日の出動を聞いて歓喜の声を上げているのだ。




