侵入
おやっさんはふいに誰かに体を捕まえられた。驚いておもわず声を出しそうになったが、口を押さえられているため音を立てずに済んだ。すぐに顔を振り向けるとその相手の顔が見えた。
「ううう・・・」
「アキバのおやじ。奇妙なところで会うな。」
それはゴウだった。彼はおやっさんを見てニヤリと笑った。おやっさんは彼の手を口からどかせて、ひそめた声で聞いた。
「お前こそ、こんなところで何をしている?」
「同じですよ。ここが怪しいと思って。」
「何か知っているのか?」
「それを調べに行くんですよ。ここでおとなしくしていてください。」
ゴウは慣れた手つきで、窓枠にさっと手をかけて身軽に飛んで中に入った。
「待て! 儂も行く!」
おやっさんも窓枠をつかんで何とか体を持ち上げて中に入った。ゴウが「静かに」と右手で合図している。
室内は暗く、かび臭いにおいがした。ここは資料室のようだ。ドアの方からわずかに光が漏れる。2人はそれを頼りに音を立てないようにドアの方に進んで行った。
「カチャッ。」
ゴウがわずかにドアをかけて廊下を見た。そこには1体のスレーバーが歩いていた。ゴウはタイミングを計り、スレーバーを後ろから襲った。叫ばないように口を押えながら当身を加え、いきなり資料室に引き込んでいった。
「言え! ここで何をしている?」
ゴウはスレーバーの首を締め上げた。
「ぐううう・・・。言う、言うから緩めてくれ・・・」
スレーバーは苦しそうに言った。
「わかった。しゃべったら緩めてやる。」
「ここでジョーカーのための魔法石を掘っている。ここにいた奴らを使って・・・。」
「その人たちはどこにいる?」
「この先の大部屋だ・・・」
「ありがとうよ。」
ゴウはスレーバーの腹に当身をした。それでそのスレーバーは気を失って倒れた。
「おい、どうすんだ?」
おやっさんが潜めた声で聞いた。
「もちろん、助けに行きますよ。こうやって。」
ゴウはスレーバーの服を脱がせた。それを着てスレーバーに化けて潜入するつもりのようだ。
「ゴウ。儂も行くぞ!」
「おやじも? やめとけ!」
「大丈夫だ。一人より二人の方がいいだろう。」
「ここまで来たからには仕方ないか・・・」
ゴウはまたもう1体、ドアの前を通り過ぎたスレーバーを狙い、後ろからその肩を叩き、振り向いたところを腹に当身を加えた。そして倒れたスレーバーを資料室に引き込んでドアを閉めた。
2人はスレーバーの扮装をして廊下を歩いた。奥の大部屋に行くまでに何体かのスレーバーとすれ違ったが、落ち着いて「ウィース!」と敬礼してやり過ごした。
やがて大部屋の前まで来た。後は助け出して、スレーバーを倒しながらここを脱出するだけである。ゴウがそのドアのノブに手がかかった。その時だった。
「お前たちは何をしている!」
後ろから不意に声をかけられた。




