鉱山
おやっさんはホバーバイクに乗ってサング山の鉱山に来た。そこは塀で囲まれ、施錠されて敷地の中に入ることはできない。
「おおい! 誰かいませんか!」
声をかけても返事はない。不気味に静まり返り、耳を澄ませても物音ひとつ聞こえない。
「やはり誰もいないのか。」
おやっさんは荷台の箱に入れていたペロを取り出して、地面に下ろした。ずっと窮屈な箱に入れられていたので、ペロは喜んでその辺を駆け回っていた。
「せまいところにいれてごめんな。後で餌をやるからな。」
おやっさんはしばらく辺りを歩いて調べた。やはり人の入り気配はない。塀はところどころ壊れ、補修はされていないようだった。しばらく誰もここに出入りしていないように見えた。
「閉山しただけか。帰るか。」
するとそのうちペロは鉱山に何かを感じたらしく、「ヴァン! ヴァン!」と塀の方に向かって吠えていた。それにはさすがにおやっさんも不審に思ったようだ。何せ、犬、いやウルフの動物の勘は鋭いから・・・。
「まあ、帰るか。誰もいないようだし。」
おやっさんは無理に大きな声を出した。そしてホバーバイクにペロを乗せて、来た道を戻っていった。
◇
夜になって鉱山に近づく人影があった。暗闇に紛れて辺りを警戒しながら草むらを進んで鉱山の塀に近づいて行く。
「儂らが帰ったと思って油断しているはず。さっそく忍び込むか。」
それはおやっさんだった。もちろんペロも後ろからついてきている。帰ったふりをして敵を欺こうとしたのだ。それで昼間、目をつけておいた塀の壊れた部分から侵入しようというのだ。
塀の穴から敷地内に入り、少し行くと鉱山の建物があった。その窓から光が漏れている。誰かが中にいるのは間違いなかった。
「入り口は・・・」
おやっさんはその入り口の方に回った。そして急に身を伏せた。彼のいる先に建物の入り口が見えた。その脇には2つの人影があった。電灯に照らされて闇に浮かび上がったのは・・・。
「スレーバーじゃないか! だとするとやはりジョーカーが絡んでいたのか!」
しばらく見ていたが人の出入りはない。ただ地面に耳をつけると何か唸るような低い音と細かな振動を感じた。
「奴ら、ここで何をしているんだ? ちょっくら探ってやるか! ペロはここで待っていろ。」
ペロはそれがわかったようにそこでお座りをした。おやっさんは意を決して、見張りに見つからないように密かに建物に近づいた。そこからそっと窓をのぞいてみた。照明はついておらず、その部屋の中に誰かがいる様子もない。慎重に窓を動かしてみると少し開いた。鍵はかかっていない。それなら侵入できそうだ。
「よし! 行くぞ!」
おやっさんは音を立てないように窓を開けた。そして中に忍び込もうとして窓枠に手をかけた時、何者かがその背後に現れた。その者はおやっさんの口を押えながら体を引きずり下ろした。あまりにも不意にやられたため、おやっさんは驚いて目を剥いていた。




