新たなラインマスク
青年は目を閉じて幼いころの記憶を頼りに変身ポーズを思い出そうとした。そして目を開け、心に思い描いたままに変身ポーズをとった。
(それは左右逆だ!)
俺は心の中で突っ込んでいた。多分、小さい頃、鏡の前で変身ポーズを真似ていたからそうなったのだろう。だが青年の思うがままにさせるしかない。彼はさらに腕を動かす。
「へーんしん!」
変身の言葉も少し違うし、腕の動きもおかしい。だが彼にとってはそれが思い描いたラインマスクの変身ポーズなのだろう。その証拠に腰にラインベルトが浮かび上がった。中心のラインタービンは赤く回転している。
「トオオオォー!」
青年は飛び上がった。すると空中でラインマスクに変身してちゃんと地面に着地した。
「ラインマスクだ!」
俺は思わず声が出た。目の前でラインマスクを見られて感動したのだ。普段は自分が変身するからその雄姿を見ることはできない。こうしてやっと見ることができたのだ。ただ残念な点もあった。
まず体の横の白いラインは2本線であるはずなのに1本線だ。マスクの色も少々、暗い。あのがっちりした青年が元だから少しスマートさに欠ける・・・そこに目をつぶればなかなかいい出来だ。いや、もう一人のラインマスクなのだから少々違う方が区別ができていいのかもしれない。
とにかく颯爽として現れたもう一人のラインマスク。その出現にカマキリ怪人が驚いたのは言うまでもない。
「き、貴様は!」
「俺は正義の味方。ラインマスク見参!」
ラインマスクはそう名乗りを上げた。これも惜しい。間違えている。だがそれはそれでいい。格好よく決まっている。
「そんなことはない。ラインマスクはこいつのはず・・・」
カマキリ怪人は少々、混乱していた。無理もないだろう。いきなり違う男がラインマスクになったのだから・・・。奴はまだしがみついている俺に気付いて、体を震わせて振り払った。俺はよろけて後ろに下がったものの、こう言ってやった。
「ラインマスクは生まれるのだ! 悪がそこにある限り!」
オリジナルのセリフだが決まった。ラインマスクの姿で言えばより格好いいのだが・・・それは仕方ない。
「こうなったらどっちでもいい! あのラインマスクを倒せ!」
カマキリ怪人がスレーバーに命じた。するとまたどこからか湧いてきたスレーバーがラインマスクに襲い掛かっていった。だがラインマスクは動じることもなく、蹴りや突きでつぎつぎにたおしていく。それはTVのラインマスクのような可憐な技ではない。空手のような技だ。彼はTVのラインマスクの戦いを意識しているのではなく、身についた武闘術で戦っているのだ。もちろん変身しているからパワーはアップしている。スレーバーが叶うはずもなくすべて倒された。
「俺様が相手だ!」
カマキリ怪人がカマを振り回しながらラインマスクに迫ってきた。これも武闘術の技で対応しているが、怪人に大きなダメージを与えるほどの衝撃はない。やはり戦い方が違うのだ。ラインマスクはラインマスクとしての・・・・。




