賭け
すべてが終わり、辺りが静まり返った。カマキリ怪人がスレーバーに命じた。
「勇者ノブヒコとミキとアリシアは基地の牢にぶち込んでおけ。改造して手下にするか、処刑するかはサウロン伯爵に判断していただく。だがラインマスクの処刑は予定通り行う! 危険な奴だからこのまま置いておくと心配だ。すぐに俺様自らあの世に送ってやる!」
奴は俺を直接、手にかけようとしている。本来なら悪の幹部はこのまま連れ帰って脳改造をして奴隷にすると考えるだろう。だが奴はこの状況でも逃げられる心配をして即刻処刑を選択した。慎重な奴だ。だが・・・。
カマキリ怪人は少々、油断していたようだ。辺りの警戒をしていなかった。奴は俺を殺そうと両手のカマをさすって近づいてきた。だがいきなりどんと横から突き飛ばされた。奴は不意を突かれて地面に転がっていった。
「お前たちの好きにはさせない!」
カマキリ怪人を突き飛ばしたのはあの青年だった。彼は一部始終を隠れて見ていたのだ。だがパーティーの全員が捕まってしまったので、勇気を振り絞って助けに出てきた。彼は俺のそばに来て声をかけた。
「助けに来た!」
だがこの無謀な青年に俺は何と言葉をかけたらいいかわからない。このままでは彼も捕まるだけだ。そして・・・彼には悲惨な運命が待ち受けるだろう。だがそれにもかかわらず、彼は勇気を出して助けに出てきたのだ。彼は俺が縛られている縄を引きちぎり、力ない俺を磔代から降ろした。
ジョーカーにとっては全く予想外の展開だろう。スレーバーが慌てて襲い掛かるが、その青年は突きや蹴りを食らわして次々に投げ飛ばしていった。さすがは武闘術10段だ。
「おのれ!」
怒ったカマキリ怪人が起き上がって青年に襲い掛かっていった。こいつにはカマは不要だとばかりに拳を繰り出す。これが本当の蟷螂拳か・・・と言ってはいられない。青年はカマキリ怪人の突きを避けて攻撃に転じる。だが彼の突きの拳は当たるが奴はびくともしない。それどころか、余裕を見せてわざと何度も突きを受けて見せさえする。
「痛くもかゆくもないわ!」
「なんだと!」
「これでもくらえ!」
攻撃が通じないと青年が慌てている間に、カマキリ怪人は彼の腹に強烈な突きを食らわせた。
「ううう・・・」
青年は後ろに飛ばされて、それを俺が受け止めた。やはり怪人には生身の人間では勝てそうもない。かといって魔法力のない俺はラインマスクに変身できない。
どうやってこの危機を乗り越えるか・・・。
(こうなったら彼に賭けるしかない!)
俺は青年に言った。
「君がラインマスクになるんだ!」
「えっ! 俺が?」
青年は面食らっただろう。いきなりラインマスクになれと言われて・・・。
「そうだ! 君が変身するんだ! 君ならできる!」
「でも・・・どうやって?」
「小さい頃、TVのラインマスクを見ただろう。あの姿を思い浮かべるんだ。変身ポーズをやったことがあるだろう。」
「でも子供の頃だから・・・」
「思い出すんだ! その間、俺が時間を稼ぐ!」
俺は前にいるカマキリ男に向かって行った。
「変身できないお前など敵ではないわ!」
案の定、ボコボコにやられる。しかし俺は奴を放しはしない。青年が変身するまで・・・。俺は必死にカマキリ男にしがみつきながら青年を見た。




