待ち伏せ
俺は縛られたまま、スレーバーに基地の外に連れていかれた。ごつごつした石の転がる山道を登っていくと、山の頂上に磔台があった。そこで縄を解かれて磔にかけられた。抵抗しようにも俺にはもはや魔法力はないし、打撃力も残り少ない。つまり力が出ないのである。スレーバーのなすがままだった。
その高所から見る景色は素晴らしいが、吹く風が服に入り込んでスースーして落ち着かない。しかもこれから処刑されようとしているし、仲間が俺を助けようと罠にはまると思うと焦りさえ感じてきた。
カマキリ怪人は俺の近くで辺りを警戒し、多くのスレーバーが山頂周囲を警護している。アリのはい出る隙もないほどの警備だ。やがて2つの太陽が真上に上り、正午になった。
「ふふふ。仲間は助けに来なかったようだな。ここで死ね!」
カマキリ怪人が不気味に笑った。俺にはその方がいいのだが、仲間が助けに来る気がしていた。罠だと知っていながら・・・。
大きな槍を持ったスレーバー2体が俺の左右に立った。横から同時に突き刺そうというのだ。
「用意!」
カマキリ怪人が声をかけると槍を持ったスレーバーが構えた。すると次の瞬間、
「ドーン!」「ドーン!」
と雷が落ちた。それで俺の左右にいたスレーバーは倒された。俺も感電したが、この程度なら大丈夫だ。
「奴の仲間が来たようだ! 探せ! 捕らえろ!」
カマキリ怪人が叫んだ。すると、
「私はここよ!」
とミキが前方に姿を現した。彼女は次々に大きな雷を落としてきた。それでスレーバーたちは逃げ惑い、辺りは混乱した。ミキが思いっきり魔法力を使って攻撃を仕掛けているようだ。
「落ち着け! あの魔法使いを押さえろ! 近くに行けば攻撃を受けない!」
カマキリ怪人が叫んだ。それで落ち着きを取り戻したスレーバーがミキに向かって行った。彼女はそれを見て後方に逃げだした。
「追え! 追え!」
カマキリ怪人がさらに叫ぶ。そんなに近くで大声を何度も張り上げられたら、俺の耳がおかしくなりそうだ。
そこいらにいたスレーバーはミキを追っていき、その後にカマキリ怪人も続いていった。俺のそばには誰もいない。
(ミキの誘導作戦にまんまと乗ったのか? そんな単純な奴には・・・)
俺がそう思っているときに、そっと2つの人影が山頂に上がってきた。もちろん勇者ノブヒコとアリシアだ。周囲を警戒しながらそっと俺に近づいてくる。
俺は嫌な予感がした。あまりにも簡単すぎる。カマキリ怪人は用意周到な奴だ。こんなにうまく進むわけがない。俺は辺りをよく見てみた。すると数体のスレーバーの気配がする。
「気をつけろ! 罠だ! スレーバーがまだいるぞ!」
俺は声を上げた。すると勇者ノブヒコたちの周囲の地面が割れ。スレーバーが飛び出した。そして縄のようなものを2人に投げつけた。
「まずい!」
勇者ノブヒコが声を漏らした時にはもう遅かった。その縄は2人に絡み、四肢の自由を奪った。そうなってはもうどうにもならない。ひどく暴れようが縄同士が絡み合い、やがて武器を落とされてぐるぐる巻きにされてしまった。
そこにカマキリ怪人が戻ってきた。後ろに続くスレーバーたちは、縛られたミキを連れている。彼女も同じ手で捕らえられたのだ。
「ふふふ。うまくいった。すべて捕らえた。さて、どうしてくれるか・・・まずはサウロン伯爵に報告して・・・」
カマキリ怪人は満足そうに笑っていた。こうなっては万事休すだ。俺たちのパーティーにはまだペロもいるが、多分、今頃はアキバレーシングに戻っていてここに来られないだろう。もう俺たちを助ける者はない・・・。




