仇討ち
おやっさんは元居た場所で、ホバーバイクのシートに座ってじっと待っていた。
「おやっさん!」
俺が声をかけると、おやっさんは俺の顔を見てほっとしていたが、
「どうだった? 大丈夫だったか?」
と聞いてきた。かなり心配していたようだ。俺は森の小屋で起きたことを話した。
「カワミさんが怪人に殺されました。それに・・・ミキさんは俺が殺したと思い込んで攻撃してきたのです。」
「ミキさんが? うーむ。これは困ったことになったな。あの子を知っているが、思い込みが強かったから誤解を解くのが難しいな」
おやっさんは腕を組んで考え込んでいた。
「おやっさん。ミキさんもそうですが、クモ怪人がまた襲ってくると思います。早くここを離れた方がいいと思います。」
「そうだな。」
俺たちはホバーバイクにまたがり、町に向けて走らそうとした。するといきなり地面に雷が落ちた。火花が飛び、その衝撃でおやっさんはホバーバイクのまま転倒した。
「おやっさん!」
俺はホバーバイクを降りておやっさんを助け起こした。
「大丈夫ですか!」
「私なら大丈夫だ。」
すると木々の間からミキが姿を現した。眉毛を吊り上げ、怒りを抑えられないようだった。
「逃がさないわ! パパの仇!」
「ミキさん。聞いてくれ。こいつは人を殺せる男じゃない。私が保証する!」
おやっさんがかばってくれた。だが、
「おじさま。どいてください。私はこの男を許せないのです! どうせあなたには嘘を言っているに決まっています。」
ミキは聞く耳を持とうとしなかった。それでも俺は必死に訴えた。
「聞いてくれ! 俺じゃない! ジョーカーのクモ怪人にやられたんだ!」
「私の怒りの雷を受けなさい!」
ミキは魔法の杖を出した。さっきの魔法の強さを見ると尋常ではない。彼女は何者かに魔法力を強化されたのかもしれない。いっしょにいるとおやっさんも危険だ。
「おやっさん。俺から離れてください」
「だが・・・」
「このままでは巻き添えを食いますから。俺なら何とかします」
俺がそう言うと、おやっさんはしぶしぶ俺から離れた。それを見てミキは魔法の杖を向けてきた。俺は身構えた。どうしようかと迷いながら・・・。するとミキの後ろからクモ怪人とスレーバーが現れた。
「ジョーカー!」
「いい気味だな。ヤスイ・ソウタ。これでは手が出せまい!」
俺は直感した。こいつらがミキさんに俺が悪者だと吹き込んだと。これでは到底、誤解は解けない。しかもミキの魔法力を強化したのだろう。彼女とは戦えない俺を葬るために・・・。
「いくわよ! サンダー!」
すると空から雷が落ちてきた。相手が怪人なら変身して倒すのだが、相手が若い女性ではそうもできない。いくら自分の身が危なくてもだ。
「バーン!」「バーン!」「バーン!」と抵抗できない俺に雷が降り注ぎ、辺りが煙に包まれた。
しばらくしてミキは攻撃を止めて様子を見た。煙が晴れていくと、そこには大穴がいくつも開いているだけだった。
「やった! やったわ! パパ、見てくれた? 仇はとったわ!」
ミキは喜びながら大きな声をあげていた。それを見ていたクモ怪人は不気味に笑った。
「ふふふ。それはよかったな。ふふふ・・・」
そしてクモ怪人はいきなり糸を吐いた。それはミキに巻き付いた。
「何をするの!」
「馬鹿な女だ。これでも気づかないのか?」
「この糸・・・あんたがパパを殺したの?」
「ああ、そうだ。そしてお前を利用してヤスイ・ソウタを倒させるために、莫大なMPを与えたのだ。お前が奴を始末してくれて助かった。後は俺がお前を絞め殺してやる!」
クモ怪人は両手で糸を操った。するとミキに巻き付いた糸は締まり、その首を絞め上げていた。彼女はその糸を外そうとしたができず、苦し気にうめいていた。
「ううう・・・」
「死ね!」
クモ怪人はさらに締め上げようとした。ミキは気を失いそうになっていた。




