魔法力ゼロ
俺は身構えた。
「出たな! ジョーカーの怪人め!」
「俺様はカマキリ怪人だ。ラインマスクが飛び込んでくるとはな。抹殺してやる!」
やはり見た目通り、カマキリ怪人だった。だとすると奴の武器は両手のカマしかない。奴はビュンビュンとカマを振り回している。威力はありそうだが、避ければどうってことはない。
カマキリ怪人はさっと接近してきて両手のカマを次々に振り下ろしてきた。奴の動きは見えている。俺はそれを避けて腹にキックを放った。見事にクリーンヒットだ。奴は下がって「ぐぐぐ・・・」と腹を押さえて苦しがっている。かなり効いているようだ。しばらくは攻撃できないだろう。この隙に青年を外に逃がそうと思った。
「早く行け! 外に魔法使いのミキという女がいる。牢から助け出した人とともに逃げるんだ!」
「わかった!」
青年はうなずいて出口に向かった。一方、カマキリ怪人はダメージを受けてまだ動けないようだ。狭い場所だが、ここで奴をを倒そうと駆け寄った。その時だった。
「バタン!」
急に足元の床が割れた。俺は不意を突かれてそのまま落ちていった。油断していて罠にはまったのだ。落とし穴に落ちたものの、俺は態勢を立て直してその底に着地した。そこは四方を厚い壁で囲まれている。
「罠にかかりよったか!」
カマキリ怪人が上からのぞき込んだ。だが深い落とし穴に落ちただけだから挽回はできる。飛び上がって床の上に出るだけでいい。俺はジャンプしようとした。だがそんなことは敵もとうに計算に入れていたようだ。
落とし穴の隅から触手のようなものが急に伸びてきて、俺の四肢に巻き付いてきた。これでは身動きが取れない。
「なんだ! これは!」
俺は引きちぎろうとしたが、なかなか丈夫だった。いやそれどころか、体の力が抜けていく。魔法力が吸収されているようだ。俺は何もできず、やがて魔法力はゼロとなった。すると変身は解けて、俺は力なくその場に転がった。
「ふふふ。ラインマスクをとらえた! ふふふ!」
カマキリ怪人の不気味な笑い声が聞こえた。奴はこんなこともあるかもしれないと思ってこんなわなを仕掛けていたのだ。用意のいい奴だ。おかげで俺はピンチに陥ってしまった。
「ラインマスク!」
外からあの青年の声が聞こえた。俺が落とし穴に落ちたのを見て立ち止まり、気がかりで外に脱出できなかったようだ。だがせっかく助けたのだから、せめて彼だけでも逃げてもらわねばならない。俺は残る力を振り絞って叫んだ。
「逃げるんだ! 俺のことはかまわずに!」
「でも・・・」
「逃げるんだ! 早く行け!」
俺はさらに強く叫んだ。それでようやく青年はたまらいながらも逃げて行ったようだ。遠ざかっていく彼の足音が聞こえている。だがそれを見てカマキリ怪人が大声を上げた。
「逃がすな! 奴は大切な怪人の卵だ! 追え!」
「ウィース!」
スレーバーが青年の後を追って行った。はたして彼は逃げきれるのか・・・。俺はそう思いながら意識が遠くなっていった。




