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倉庫裏

 ゴール前でデッドヒートを繰り広げた。俺もゴウも勝利を譲る気などない。後はゴール前の直線勝負だ。彼の漆黒のマシーンは俺のよりわずかにトップスピードが速い。俺のわずかなリードはみるみる縮まってゴウが横に並ぼうとする。ゴールまであと少しだ。


(このまま、このまま・・・)


 俺は祈るような気分だった。そしてようやくゴールを通過した。結果は・・・


 俺はマシーンをコースに停めてゴール近くに設置している順位板を見た。すると俺が勝っていた。わずかな差で・・・。


「ソウタ! やったな!」


 おやっさんがピットから真っ先に飛び出してきた。そしてあまりにうれしかったのか、俺をぐっと抱きしめていた。その後からミキやシゲさん、ジロウにロコ、そしてペロまでも出てきて俺を囲んだ。


「おめでとう!」「よくやった!」「やったぜ!」「すごいわ!」「ギャン!ギャン!」


 それぞれが祝福の言葉をかけてくれた。


「ありがとう。みんなのおかげだ!」


 俺は珍しく感極まっていた。こんなことは前世でもなかった。この仲間たちがいて大きな喜びがあると気づかされた。

 ふと俺は背後で強い視線を感じていた。振り返るとゴウがいた。彼は俺に近寄ってきた。その顔は相変わらず怖い。今度は何を言い出すのか・・・。


「おめでとう! お前の走りは素晴らしかった。」


 ゴウは右手を出した。彼は俺を祝福に来たのだ。やはりいい奴だ。


「ありがとう。お前こそすごかった。」


 俺はゴウとしっかり握手した。


「今回は俺の負けだ。だが次のレースでは俺が勝つ。じゃあな。」


 ゴウは去り際、俺の耳に何やら呟いていった。俺は「えっ!」となったが、そのまま彼の後ろ姿を見送った。おやっさんがそれに気づいて俺に聞いた。


「ゴウの奴。なんて言ったんだ?」

「いえ、何でもないです・・・」


 俺はそう言ってごまかした。どうして奴が・・・。



 俺はしばらくピットで休んだ後、倉庫の裏に行った。ゴウが去り際に、


「大事な話がある。しばらくしたら倉庫の裏に来てくれ!」


 と言ったからだ。するとゴウはすでにそこで待っていた。俺は少し警戒していた。かつて彼の取り巻きの一人がジョーカーの怪人だったからだ。俺はゴウに聞いた。


「大事な用とはなんだ?」

「俺はあるうわさを聞いた。いや、ある筋からの情報だ。お前なら興味があるかと思ってな。」

「それは何だ?」

「ジョーカーについてだ。」


 ゴウは静かに言った。やはり彼は怪しい。俺は身構えた。だがゴウの方はその態度を変えていない。


「ここからしばらく行ったところにアール山がある。その地下にジョーカーの基地がある。そこで拉致された人たちが改造されている。聞いているのはそれだけだ。じゃあな!」


 ゴウはそれだけ言って去ろうとした。俺は彼の後ろから疑問を投げかけた。


「待て! どうしてジョーカーを知っている? なぜその基地のことを俺に教える? お前は何者だ?」

「さあな。じゃあ、俺は伝えたぜ。」


 ゴウは振り返りもせず、そのまま行ってしまった。


(奴はジョーカーの手先か? これは罠か? いや、違う。もし罠ならこんな手を使って来ないだろう。だが味方とも言い難い。一体、ゴウは何者なのか・・・)


 俺はその後姿を見送りながら考えていた。


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