回復
鬼族のほとんどは傷を負って倒れていた。だが全員、助かりそうだ。ミキは回復魔法で鬼たちの手当をしている。鬼族の中にも回復魔法が使える者もいるようだ。応急手当だが、しばらくしたらすべての鬼が自分たちの集落のあった森に帰れるまでに回復するだろう。
俺は変身を解いてゾルダのそばに行った。ひどい傷を受けていたが魔法で手当てされて少しは回復していた。
「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。集落を襲ったのはお前たちの偽物だったのか。許せ。誤解していた。」
「あれはジョーカーという悪の組織の企みだった。お前たちのせいではない。」
「だが俺は以前、うわさだけは聞いていた。ラインマスクという正義の仮面の男がいるという。一時は疑ったが、やはりラインマスクは悪ではなく正義だった。」
俺は大きくうなずいた。ゾルダはその後に表情を緩ませて言った。
「しかしお前が本物のラインマスクだったとはな。」
「意外だったか?」
ゾルダは首を横に振った。
「お前ならわかる。いや、お前のような勇気を持った男が正義の仮面のラインマスクであればと思っていた。」
ゾルダにそう言われて俺は何かこそばゆかった。だがTVのラインマスクの相川良のように見えていたのならうれしい限りだ。前世でラインマスクのオタクを続けてきた甲斐がある。
「俺たちは集落に帰る。また復興させるつもりだ。」
「がんばれよ。」
「ああ。今回のことで多くのことを失ったが得たものもあった。」
「それは?」
「人間への信頼だ。お前のような奴がいるからな。これからは人間とも仲良く付き合っていきたいものだ。」
ゾルダは穏やかな表情でそう言った。
◇
俺はライムの町に戻り、アキバレーシングの店に帰った。おやっさんは心配していたようで俺の姿を見てすっ飛んできた。
「ソウタ! 大丈夫だったか?」
「ええ、大丈夫です。この通りです。」
俺は笑顔で言った。
「しかし大変だったな。ジロウから話は聞いた。あれからどうなったんだ?」
先に救出されたジロウがおやっさんに鬼族に拉致されたことを話していた。その後のことが気になるのは当然だ。俺は「勇者とゆかいな仲間たち」の偽物が鬼族を襲ったので、そいつらを倒し、鬼族を救ったことを話した。
「すべてジョーカーの企みでした。俺たちの偽物も怪人でした。」
「そうか。それはよかった。ところでお前は本当に元気なんだな?」
「ええ、そうですが・・・」
おやっさんの言葉に俺は思い出した。
(そうだった。落ち込んだ俺を元気つけようと、リアナ村のイモを食うという合コンに参加させてくれたのだった。忘れていた。いや、もう吹っ切れているのだ。)
ヒーローとしての自覚が俺をそうさせたのかもしれない。いつまでもくよくよ悩まずに俺の使命を全うしなければならない・・・と言えばかっこう良すぎるか。単にピンチの連続に悩む暇などなかったというところだが。
「とにかくよかった。これでお前はレースに集中できるな。それにマシーンも出来上がった。」
おやっさんは奥にあったレース用のホバーバイクを指さした。確かにところどころに手が加えられている。
「新型マシーンだ! これならゴウのマシーンにも引けを取らないはずだ。」
おやっさんは自信満々だった。俺も元に戻ったし、久しぶりにレースでひと暴れできそうだ。レースの日は迫っている。ゴウにリベンジしてやらねば・・・。そう思うと俺はワクワクしていた。




