本物
俺は奴の言葉を聞いて納得した。過去の俺の戦いの映像をずっと見ていれば、前世でのTVのラインマスクを見ているのと同じことになる。だから奴は俺と同じ力を出せるのだ。しかしそんな記録映像を取っていたのか。編集してこっちにも渡してほしいくらいだ…とちらっと思ったが、それは言わずに押し込んだ。
とにかくニセラインマスクは俺とほぼ同じ力を持っている。技を繰り出しても同じ技で返してくる。負けることはないかもしれないが勝つことはできない。ある意味、ピンチだと言いたいところだ・・・。
だがこれだけは言える。奴の「ラインマスクのオタク歴」は俺の足元にも及ばない。ラインマスクの力をすべて理解する俺にとって奴の「物まね」はなんてこともない。
「本家の力を見せてやる! トォーッ!」
俺は大きくジャンプした。すると奴もつられてジャンプしてきた。空中戦はそんなに披露していないはずだ。俺の頭の中にはTVのラインマスクの技がまだまだいっぱい詰まっている。
ラインマスクの空中での必殺技はもちろん「ラインスローシュート」だ。だが俺はわざとその技を発動しない。すると奴は空中で俺を背後から捕まえてきた。俺を出し抜いて「ラインスローシュート!」に持ち込もうとしている。だがそうはいかない。
「かかった!」
奴は俺の誘いに乗ってきた。そんな態勢の敵に対する技はこれだ。俺は奴の首を捕まえて大きく前屈して体を奴の技を返した。
「ライン返し!」
すると奴は前方に投げられて真っ逆さまに地上に落ちていく。そこで俺は大きく回転して態勢を整えると、
「空中ラインキック!」
を放った。それは空中で敵にキックを加える技である。俺の渾身のキックは奴をとらえ、そのまま奴は地面に叩きつけられていった。俺はゆっくり空中で一回転して着地した。
「ドッカーン!」
背後で爆発して煙が上がった。風が俺のマフラーを揺らす。
(決まった!)
この瞬間はいつもながらこの上ない爽快感が得られる。ラインマスクの偽物、いやニセラインマスクは俺のラインマスクには敵わないのだ。こんな姑息な怪人を作ったジョーカーを笑ってやりたい気持ちでいっぱいだった。
だが戦いは終わりではない。「勇者とゆかいな仲間たち」の偽物があと3人と1匹残っている。奴らの戦いは互角だったはずだが・・・。
するとそちらももう片付いていた。勇者ノブヒコは笑いながら俺に言った。
「所詮、似ているとはいえ、まがい物。本物に敵うはずはないのだ! はっはっは。」
だが後からミキに聞いた話では全くの互角だったらしい。だがペロがグレートウルフからキングウルフにパワーアップして決着がついたらしい。ペロは一時的だがキングウルフになれる。そのパワーは絶大で、簡単に偽物の3人と1匹を叩きのめしたそうだ。もちろんそいつらも怪人(1匹だけ怪獣)だから爆発して消えていった。




