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Noah-領域外のシロ-  作者: 文祈奏人
1章

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18.カオとヤヤ

「ふふっ! きゃっ! くすぐったいよ!」


 よく知る魔狼に飛びつかれ地面を転がると、そのまま下敷きにされたままベロベロと顔を舐められる。


「こら、離し、わっ! あははは!」


 久々の再会を喜ぶモフモフたちに埋もれ、思うように起き上がれない。


「「ガゥ! ガゥ!」」

「カオ! ヤヤ! わかったから」


 私は懸命に私より数倍大きな魔狼を退け、身体を起こす。

 よく知る二匹の他に、年若い魔狼が五匹。とは言え、こっちも知っている顔だ。


「シロ、お前何やってんだよ! 大丈夫か!?」

「無事なら状況を説明しなさい」

「本当に魔狼とじゃれてる……」


 ザビを先頭に、ハークハイトとユーリがそれぞれが言葉を発する。


「グルルルルゥ」

「カオ、ダメだよ。みんなもこっちおいで」


 私は立ち上がり、周りにいる騎士を警戒している七匹全員を集める。

 額を合わせ鼻を擦り合わせる魔狼の挨拶を全員と交わした後、ハークハイトへと声をかける。


「ハークハイト、黒い子がカオで、灰色の子たちの中で額に菱形の模様がある子がヤヤ。それから、イアン、ラス、サラ、シーラ、ニコ。この子たちはカオとヤヤを中心にした群れの子たち」

「君が森で暮らしてたという魔狼か?」

「うん」


 ハークハイトがこちらへ歩み寄ろうとすると魔狼たちが私の前へ立ち壁を作る。


「人を襲わないのか?」

「魔狼はむやみに人も魔獣も襲わないよ。森の支配者である魔狼たちは生態系を守る役割もしてる。増えすぎた魔獣を狩ることはあっても、必要以上に獲物を狩ることはしないの。人間を襲ったのは、縄張りを守るためとか、人間の方から先に何かをしたんじゃないかな?」


 ハークハイトの言葉に、魔狼たちを撫でながら答える。


「今だって、私をハークハイトから守ろうとしてくれてるだけだよ」


 ヤヤが私の手をペロリと舐める。


「だが、なぜ君と森にいた魔狼たちがこんな人里にいる?」

「んー。なんでだろう? そこまでは私にもわからないや。だけど、森でピポテを使うのは私かマオだけだから、あの大きな音を聞いて駆けつけてくれたのかも」


 ね? と、カオの頭を撫でると、カオが視線をハークハイトに移した。


「ハークハイト、剣を置いて膝をついて」

「なぜだ?」

「挨拶しないといつまでも魔狼たちが警戒する。この場のリーダーがハークハイトだってカオは分かってるの」


 私に言われるがまま、腰に挿した剣をおろし片膝をついたハークハイトの元へトコトコとカオが歩いていく。

 隣に立つユーリが剣に手を置いているけれど、カオはちらりと流し見し、それを牽制した。

 ハークハイトが膝の上に置いた手の甲を嗅ぎ、鼻を仕切りに動かして観察している。

 一通り確認をすると、私の元へ戻ってくる。


「いい子。ハークハイトは味方だよ。私を守ってくれた人」


 私はカオの頭を撫でながら言う。


「ところで、シロ。俺たちも近付いて大丈夫なのか? 俺、魔狼をこんな近くで見るの初めてだから興味あるんだよ」


 少し興奮した様子でザビが尋ねてくる。


「臭いを確認してる間はジッとしててね。それと、慣れない間は上から手を出すと驚くから下からね」


 魔狼たちに、みんなも行っておいでと言うとカオに連れられ隊の中へ入っていく。


「それにしても、七匹の魔狼なんて戦いになったら結構大変だったな。ハークハイト」

「そもそも、本気で戦う気ならそう簡単に東の門をくぐることもなかっただろうがな。魔狼は賢い種だ」

「すんなり入ってきた時点で目的があったってことか」

「ユーリは混ざらなくて良いの? ザビは向こうでカオと早速戯れてるよ」

「あいつ……時々自分がハークハイトの護衛だってこと忘れてんだよな」

「今は安全も確認できたし、ユーリも行ってこい。一人だけ覚えられなかったら後でシロに近づいて咬まれるぞ」

「まじか!」


 ハークハイトの言葉にユーリはすぐさま魔狼たちの方へ向かって行った。

 私は、騎士たちと魔狼たちが交わる光景を見ているハークハイトの袖を引っ張った。


「これで森に帰れるかな?」

「君はそんなに森へ帰りたいのか?」

「だって……」


 ここでの生活には慣れたし楽しいことも多い。だけど住み慣れた森とはやっぱり違う。


「前にも言ったが、ハクもマオもいない森で君は生きていけるのか? 君が危険かもしれないとわかっている場所に一人帰すことは、私には許容できない」

「ハークハイトは私に怒ってばっかりなのに、どうして?」

「別に怒っているわけではない。君はいつも突拍子もないことをするから、注意しているだけだ」

「えー」


 嘘だーとハークハイトを見ると、いつものように頬をむにりとつままれる。


「いひゃい……」

「君が良いなら、しばらくはここにいれば良い。処置室での仕事もしてくれているし、私としては助かる。まぁ、何でもかんでも薬を作るのは改めて欲しいところだが……」


 頬から手を離したハークハイトは、騎士と魔狼たちの方を見る。


「それより、今日はもう遅いから隊を撤収させるが、彼らはどうすればいい?」

「一緒に帰る」

「私の家にか? ……勘弁してくれ」

「でも、ついて来ちゃうと思うよ?」


 カオもヤヤも小さな子どもの頃から知っていて、私たちは兄妹の様に育った。

 カオとヤヤをリーダーとしたあの群れは、昼間は好きに行動をしていたけど、夜は家に帰ってきてみんな一緒に寝ていた。

 再会したのなら夜は一緒に過ごすのが当たり前の流れだろう。


「だが、基地内に置いていくのも不安があるな……。君の言うことならちゃんと聞くんだな?」

「一緒に寝るから大丈夫」

「この冬空の下でか?」

「お家入れてよ」

「魔狼は無理だ」

「私の部屋なら良いでしょ?」

「そう言う問題ではない」


 でも、家には確実に来ちゃうと思うんだよね。んー……ちょっと寒いけど仕方ないかな。


「それなら私は外でいいや」

「子どもを外で寝かせるなどできるか」

「じゃぁみんなお家の中で良い?」

「……少し考える」


 はぁ、とため息をついたハークハイトは魔狼たちと戯れているザビを呼んだ。

 この短時間に随分と打ち解けている。


「なんでしょう? 主」

「すまないが、お前も今日は私の家で寝てくれ」

「俺は構いませんよ」


 何故か今日はザビもお泊りらしい。ハークハイトはその後ユーリにも声をかけ隊を撤収させた。

 それから何羽かの伝蝶を飛ばし、戻ってきた伝蝶の声を聞いて頭を抱えていた。


「カオ! ヤヤ!」


 私が名前を呼ぶと、魔狼たちが集合する。


「それにしても、魔狼と戯れる日が来るとは思わなかったなー」

「みんな可愛いでしょ?」

「そうだな。こんなにコミュニケーション取れるとは思ってなかった」


 どうやらザビは魔狼たちと早速友達になれたようだ。


「待たせたな。帰るぞ」

「ファーガス団長はなんて?」

「とりあえず様子を見ろだそうだ。ま、そうとしか言いようがないからな。問題があるのはもう一人の方だ」

「あー。まぁ、あの人はすぐ動けませんし大丈夫でしょう。さくっと帰りましょー」

「ザビはお泊まりの準備とかしなくていいの?」


 ザビは手ぶらのまま歩き出そうとする。さっき泊まれと言われて、そのまま行くって準備とかいいのかな?


「俺は着の身着のままだから、持ち物とかねーよ? いつも何も持ってないだろ? 大事な物は持たない主義なんだ」

「ザビウスは元々野良だからな」

「野良?」

「俺は孤児で家族もいないし、ある程度年齢いってからは盗賊や山賊、悪質な貴族相手に盗みをしてたんだよ。それで、ある日主に捕まってそのまま召し上げられたって訳さ。牢獄に行くか私の手足となるか選べ! ってね」

「私が極悪非道な人間の様に聞こえるのは私だけか?」


 そう言えば、ザビは騎士じゃないって最初に聞いたけど、ここにいる経緯とか知らなかったな。


「そんなわけで俺は隠密とか諜報とか得意なのに、シロは最初っから俺のこと見抜いてたよなー」

「多分カオたちでもすぐわかるよ。今度かくれんぼしてみたら?」

「それいいな! 特訓兼ねてやろうかな」


 魔狼たちとの特訓の予定を入れたところで、ヤヤが私の前で伏せの動作をする。


「ヤヤに乗るの久々だね」


 ハク以外にもヤヤの背に乗って移動することはよくあった。

 ハクが連れてきた頃は私よりも小さい子どもだったのに、今じゃ背中に乗せてもらえるほど大きくなった。

 ちなみに、カオは私が乗ってしまうといざと言う時に私を守れないのであまり背には乗せてくれない。

 これはハクが決めたルール。

 私がカオの背に乗るときは群れ共々とにかく逃げると言う状況に陥った時だけだ。

 滅多にと言うか、これまで一度もそんな場面になったことはないけど。


「そういや、シロは魔狼に乗るんだな」

「うん。むしろ馬には乗ったことないから今度ラインハルトに頼んでみようかと思ってる。ザビももっと慣れたら乗せてくれると思うよ」


 魔獣が人を背に乗せるのは信頼関係の証。

 ザビならすぐ乗せてもらえるようになるだろう。


「カオ、ハークハイトについて行って」


 カオは群れのリーダー。カオが行くところへ他の魔狼たちも付いて行く。

 カオは私の指示に従ってハークハイトの横を歩いて行く。


「ところで主、こいつらどうするんですか? 家の庭ですか?」

「いや、勝手にどこかへ行かれるのも困るからな……部屋を作ってそこへ入れる」


 どうやら部屋を用意してくれるようだ。

 今日は本当に久々にモフモフに埋もれて眠れる。一人のベッドは寂しくて、時々夜中に目が覚めるとハークハイトの布団へ潜り込んだりもしてた。あんまりやると嫌がるから毎日は無理だったけど。


「空き部屋を作るから、少しの間外で待機していてくれ」


 一人家の中へと入っていったハークハイトが倉庫代わりの空き部屋だった玄関に一番近い部屋を魔狼が入れるように片付けてくれた。

 元々森の家で寝たり、人と一緒に生活することをしていたこの子たちは他の魔狼と違い人の家と言うものに慣れている。家の中の物に悪戯することはない。

 マオやハクに怒られちゃうからね。




 家に入ってからもハークハイトは何やら忙しそうにあれこれをしていたけど、私はずっとカオたちと遊んでいた。

 ザビもそんなハークハイトを手伝っていてせわしなく動いている。

 私は先に寝るね、と二人に言って魔狼たちの部屋にいた。

 就寝のために寝間着に着替えた私の胸元にヤヤが鼻を寄せる。


「クークー」

「やっぱり気付いたよね、ハクの魔石」


 私は服の下からネックレスを取り出して、魔狼たちに見せる。


「ごめんね。ハクを守れなかったの……」


 カオとヤヤは群から逸れ、熊に襲われ瀕死の所をハクが助けた子たちだ。

 二匹にとって、ハクは親も同然の存在。

 私の近くにハクがいないことに最初から気付いていただろう。


「ごめんね」


 漏らすように出た言葉に、カオが私の頬をペロリと舐める。ヤヤも身体をくっつけてすり寄ってくる。

 言葉はなくても、私を責めることもなく心配してくれているのが痛いほど分かった。


「カオ、ヤヤ、ありがとう。さ、みんなも今日はもう寝ようか」


 みんなでかたまって暖め合って眠る。

 マオ曰く、魔狼団子。

 久々に感じる体温と、もふもふと、獣の匂い。

 気づけば吸い込まれる様に眠っていた。

やっと狼たちを出せました…!

ちなみにこの世界では、動物は全て魔獣の括りです。

狼は魔狼なのに馬は?とかあると思いますが、単純に音の響きでつけたりつけなかったりしてるだけで深い意味はありません。馬も猫も狼も鹿もみんな魔獣です。

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