1話 王女
「ルイス。どうしよう」
焚き火を囲んで座っているアベルとルイスだがアベルの顔は満天の星空には似つかわない顔をしていた。イクサナシ王国を出て早1ヶ月。旅は順調かと思われたがとある問題が起きていた。
とある町に立ち寄った時の出来事。買い出しへと出ていたのだがそこですられたのか落としたのかは分からないが早い話、お金を1部無くしてしまったのだ。
「そんな気にすんなって。なんとかなるよ」
そんな時の出来事。
『かさかさ』
「アベル。なんか今音がしなかった?」
「ああ、した。誰かいるのか?ーーいるならでてこい」
そう言うとアベルとルイスは剣を構える。緊迫した状況の中、暗闇から人型のシルエットが浮かび上がり、焚き火に照らされその姿が明るみになる。綺麗な赤髪にキリッとした美しい目、そしてなによりもそのスタイルの良さ。思わず男なら目が奪われる美貌の持ち主の少女だった。
「怪しいものじゃないわ」
女性の声だ。ただその声には気品と勇ましさがあり、どことなく懐かしさを感じられる。
「もしかしてアンナ?」
「ーーアベル?」
よーく見ると見覚えのある顔であった。小さい頃とは違い成長していたため気づけなかった。
「彼女と知り合い?」
「あぁ。こいつはミカルド・アンナだ」
「まさか王族の人?」
「そうよ。アンナはミカルド帝国の王族。次期女王ミカルド・アンナという者よ。はじめまして」
そう言うと彼女は王族らしい振る舞いでニコッと微笑みを見せる。
ミカルド帝国はクレアの王国であるスコット王国と仲が良く、両国は親交国として知られている。他にもミカルド帝国は戦力としては国随一の強さを誇り、敵国と見なすや否やすぐにでも壊滅へと追い込む活発的な国としても知られている。
「こんな所で何してたの?」
「ちょっと色々あって。それよりもせっかくだし少し休ませてくれないかしら」
そう言って男ふたりと女ひとりで改めて焚き火を囲う。
「あなた達こそこんな所で何してるの?」
出来上がった晩御飯のスープをすすりながら質問をなげかけてくる。
「俺ら今はスコット王国に向かってるんだ」
目的は結婚式に乗り込み、クレアを奪うためだ。
もちろん王城に乗り込むわけだからただ事ではない。もし捕まってしまえば死刑罪に値するかもしれないぐらいの事だ。しかしそれに対しアンナはーー。
「それアンナも着いていくわ」
そう言ってニコッと笑って見せた。
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