4話 許嫁
すぐさま食堂に戻り、真相を確かめる。
「おいクレア、ハーベルトの許嫁って本当か!?」
これが本当ならば幼少期の約束を守ろうとしていた俺自身はなんなのだろうか。
「う、うん。割と前に決まったことなんだけどね」
にこっと笑う笑顔がどこがぎこちない笑顔に感じてしまうのは願望からだろうか。
「あー、えっと」
王族の許嫁となれば政略結婚が少なからず関わってくる。そうなってくると止める手段は無いに等しいまである。
「昔の約束を守ろうとしてくれてた?」
「え、覚えてたの?」
「覚えてるよ。けど忘れてくれるとありがたい……かな。約束守れなくてごめんね」
申し訳なさそうに目を逸らしながら話す彼女が何を思って話しているのかは鈍感なアベルでさえわかる。
「クレアはさ、まだ約束を待っててくれているの?」
「ーーうん、待ってる」
その答えだけで、動く理由としては十分であった。クレアはまだアベルのことを待っていたのだ。なら男がやることはひとつだろう。
「絶対に約束は果たす。お前を奪い取る」
それだけを言い残し、俯くクレアを他所にその場を立ち去る。向かうのは一人の男の元だ。
「ハーベスト。俺と賭けをしよう」
「ハーベルトだ!んで、賭けとはなんだ?」
「卒業祭。俺とお前が戦って俺が勝ったらお前とクレアとの結婚はなしだ!」
「なるほど。だが卒業祭のトーナメントで俺とお前が戦うってなったら決勝まで戦うことがないと思うがそこまで勝ち上がってこれるのか?それに、賭け事には対価が必要だと思うのだが?」
決勝まで上がる自信はもちろんある。だからこそこの話持ちかけたのだ。だが問題はその対価である。1度こちら側は負けているのだ。大きく出ないと相手にすらされないだろう。
「決勝までに関しては大丈夫だ。対価に関しては俺が負けた場合、貴族をやめよう」
テオ・アベルは一応、ちょっとした貴族である。その証に胸には貴族の証であるバッチをつけ、これでもかと輝かせている。しかし、貴族をやめるということはその証を捨て、ゼロからあてもなくこの世界を生きるということを意味するのだ。
「ふむ、おもしろい。元々、許嫁の女とはあくまでも地位のためだしそこまでの対価は必要ないがーー男に二言はないだろう?」
「あぁ、ないさ。だが地位だけが目的で結婚なんて、お前はクレアの隣には相応しくない」
「なんとでもいうがいいさ。俺は剣聖の血が流れた男。実力と地位がものを言うのさ」
ーーそれからというもの数日が立ち、卒業祭が始まった。
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