3話 剣聖
「アベルよくあいつと組む気になったな」
剣術の授業が終わり、食堂でお昼ご飯を食べている中ルイスが話を切り出す。
「あいつって?」
「ダグラス・ハーベルト。剣聖の血筋であるダグラス家の坊ちゃんで隣のクラスでは有名人だよ」
剣聖。それは太古の時代、魔物を一掃し、魔物の長である魔王ですらも封印した人物がいた。名はダグラス・クライヌ。それからというものダグラス家の血が流れるものは剣術において圧倒的な強さを誇ってきた。そのせいか今では王族と同等とされるレベルの一族である。
「アベルコテンパンにやられてたねー。これは私が守ってあげなきゃかな?」
友達を引き連れつつ隣に座っていたクレアがからかうように笑っている。
「俺はクレアには守られねぇからな!俺がーー」
「俺がー?」
「な、なんでもねぇよ」
俺が守ると言いかけるが寸前のところで思いとどまる。俺とクレアでは身分の差に加え何もかもが違いすぎる。ましてや剣聖の一族の子どもにやられてるようじゃ守るなんて言えるはずもない。まだ、今のアベルでは言えることでは無いのだ。
「そういえばクレアさんって王族でしょ?ダグラス家と関わりとかないの?」
クレアはスコット王国の王族の1人であるのだ。そんなクレアと王族レベルの地位とされているダグラス家、関わりがないはずもない。
「あるよ。彼とはお見合いもした……かな」
「わぁーおってアベルどこいくのー?」
「演習場だ!」
もやもやする気持ちを振り払うようにその場を後にする。
「くっそー、地位の差って思ったよりでかいんだな。このままあいつらがお付き合いとか始まっちゃったらどうしよう」
はっきり言うとクレアのことが好きだ。ちっちゃい頃に交した結婚の約束を未だに信じ、果たそうとするくらいに好きなのだ。だがしかし成長すればするほどその難しさ、つまるところ現実を知るばかりである。
「がぁぁぁ、わっかんね」
ぶっちゃけちっちゃい頃に交わした約束だ。もう今となっては関係の無い話なのかもしれない。だがそれでも未だに好きな人はクレアなのだ。クレアの隣にいる男がアベル自身でありたいと願うのは浅はかなのだろうか。
「おい、アベル!至急で大事な話がある」
人が悩みを抱えているって時に現れたのはルイスであった。
「どうしたの?」
「クレアさん八ーベルトの許嫁だってよ」
事態は思っていたよりも深く、深刻に進んでいたのであつた。
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