2話 剣術
「びっくりさせるなよクレア!おかげでめちゃくちゃ怒られたんだからな!」
「遅刻するアベルが悪いんだよーだ!」
「べー」といいながら赤い舌を見せる可憐な少女。こいつがスコット・クレアである。
「じゃーなんで怒られるのが俺だけなんだよ!」
実はアベルだけが呼ばれ、アベルだけが怒られていたのである。
「アベルのおかげで僕はしれーっと席に着けたからね」
「くっそー」
「クレア、行こー?」
雑談する中、クラスメイトがクレアのことを呼ぶ。
「あ、今行く!ってことでじゃあ私は先行っちゃうね」
「え、次ってなんの時間?」
「剣術の他クラス合同授業だよばか」
剣術。人によって型は様々だがここ、イクサナシ学園では基本的な剣術の基礎だけでなく、幅広い剣術に対しての知識を習っていく。2、3年生になれば自分の型の追求、研究がメインとなってくる。
「アベル剣術の時間になると真剣だよね」
「逆に剣術しかできることないからね」
意味はそのままである。特に深い意味は無い。
「さて、今日は模擬戦をやってもらう訳だがもうすぐ卒業祭も近づいているし怪我をしないように。あくまでも剣術の時間だから剣術以外は使うの禁止で模擬戦を行ってもらう」
卒業祭。卒業に伴って行われるトーナメント形式の学内大会である。剣術、魔術、体術、基本的にはなんでもありで行われ、優勝者には卒業後さまざまな利を得るとされている。
「とりあえず2人組を組んで順番に演習場へと入ってくれ」
その言葉を合図に2人組ができていく。
「んじゃ俺はいつも通りルイスとーー」
「おいおまえ、俺と組もうぜ」
いつも通りルイスと組もうとし、ルイスの方にちらっと目を向けるが別の人と組んでしまったようだ。
「わかった!よろしくな、俺はアベルだ」
「悪いが馴れ合うつもりはない」
「え?」
どうやら気難しい性格のようでそれ以上会話をすることは無く、順番まで大人しく待つことにする。
「次、テオ・アベル対ダグラス・ハーベルト」
どこかで聞いたことある家名に疑問を持ちつつも演習場に入り、剣を構える。
「はじめ!」
合図とともにアクションが起きると思ったがお互い見合ったまま場が流れる。それに対して待ちきれなくなったアベルから1歩踏み込みーー仕掛ける。
「はぁぁぁぁ!」
気合いを込めた一撃。しかし、それは呆気なく弾かれ気づけば相手の切先が喉元に当たるか当たらないかという寸前までに追い込まれていた。
「勝者、ダグラス・ハーベルト」
アクションが起こってから1秒にも満たさない速度で事は終わったのであった。
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