1話 遅刻
「大人になったら私と結婚してくれる?」
幼い少女が幼い少年に対し涙を浮かべながら問いかける。
「うん、もちろん!必ず迎えに行くから!!」
それを最後に馬車は出発したが、少年の姿が見えなくなっても少女はその場に立ち尽くしていた。
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「おいアベル起きろ、また遅刻するぞ」
重い瞼を微かに開ける。するとそこには金髪美少年の姿が映る。
「美少女じゃなくて美少年かよ」
「それは褒めてるってことでいいの?」
あいさつ代わりの言葉を交わすとそっと起き上がる。
「懐かしい夢を見たよ」
「クレアの夢?」
ほとんどの幼少期を一緒に過ごしたスコット・クレア。この学園において、今ではその名を知らぬ者は居ないという程の地位、能力、そして何よりもその美貌。
「結婚かぁ」
「何考えてるのか想像ついたけど急いで準備しろ!まじで遅刻するって!」
「いやそんな焦らなくても」
「ばかやろういそげ!!!」
そんなこんなで一日が始まる。
ーー舞台はイクサナシ王国の有名学園。ちょっとした貴族から王族までと幅広い権力者の子供たちが通い、勉学、剣術、魔術、どれをとっても一流と呼ばれる学園である。そしてここ、高等部の3年2組ではミッションが行われようとしていた。
「おい、ルイスのせいで遅刻しただろ」
「いやこればっかりはアベルが悪いと思うけどなぁ」
教室の後ろのドアの前でこそこそと座り込む2人。
「怒られないようになんとかしてしれっとはいれないかな」
「んー、大人しく前から入った方が怒られないと僕は思うけどね?」
考え込む中アベルがはっと何かを思いついたかのような顔をする。
「こっそり入ればバレないんじゃね?」
「え?ばか?どうやってこっそり入るか考えてたんじゃないの?」
「つべこべ言わずついてこい!とりあえず俺に任せとけ」
「あっ、そういえばこいつばかだった」
呆れるルイスを他所にこっそりとドアを開ける。
「しすがについてこいよ、バレたらひゃくぱー怒られちゃうからな」
しーのポーズをしながら四足歩行で進むアベル。しかし上手くいくはずもなく。
「わっ!」
銀髪の少女が後ろを通るアベルを驚かせる。
「うぉっ!?!?おはようクレア……あ」
しかしびっくりしたときに張りあげた声で先生がアベルの方を向き、バッチリと目が合ってしまう。
「アベルくん。遅刻に加え授業妨害です。後で職員室に来なさい」
「はい」
このあと、こっぴどく叱られるアベルであった。
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