表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

出会い~もうおしまいだぁ~

「お、おい誰なんだ彼は……この圧倒的な存在感! タダモノじゃないぜ!」


「見えるぞ……彼の背後に神々しいオーラが……!」


「着てる服からして貴族かしら……も、もしかして王族の方では……!?」


「い、一体何者なんだ!? 一体どれほどの実力を隠し持っているというんだ……!?」


 周囲の希望者が僕を見て口々に驚きや(おそ)れ、憧れの声を上げていく。


 ふっふっふ……まさに想定通り!


 自分自身にスキルを使うことで、この会場にいる全ての人が僕を謎の実力者として認識しただろう。


 試験にエントリーする前に、マーカーレベルを10まで引き上げた成果だ。


 レベル補正により、注視(ちゅうし)強制力は中、好感度操作は小まで引き上げることができた。中とか小とかおおざっぱな表記だが、効果はテキメンだ。


 ちなみにレベルは、“ステータス☆オープン”を笑ってたバカップルを偶然(ぐうぜん)見つけたので、怪我をしない範囲で執拗(しつよう)にイタズラをかましまくったことで上がりまくった。ありがとうバカップル。しかし公共の場でいちゃつきまくったのは許さぬ。


『で……どうすんだよ?』


 やや呆れたような様子で(たず)ねるシイン。どうする、とは?


『あの試験官達が胸に()してる金の羽取れって話だろ? お前のスキルでどれだけ印象操作しても羽はくれないだろ?』


 印象操作っていうな! 人聞きの悪い! ……まったくお前はなにも分かってないな。


『なにがだよ?』


 いいか? 二人一組でペアを組もうって時に、超絶オーラを放つ謎の少年がここに現れたわけさ?


『はあ……?』


 そりゃもうね? ()が非でも同じペアを組みたい! ってみんななるだろ? 僕を中心に殺到(さっとう)する希望者達! そして僕はナナメ上から目線で一番強そうな人をペアに選抜! その人にオンブにダッコで試験を突破しようという魂胆(こんたん)なのさ!


『作戦しょっぱ! そしてダッサっ!!』



 あと僕、実はすっごい人見知りだから、自分から声掛けられないんだ。だから誰かが声掛けてくれるのを待ち続けるしかできないのさ……やれやれ。


『やれやれ言いたいのはこっちなんだが。15歳なのにまだ人見知りとか言ってんのか』


 ……フッ。かつての古の民はこんな言葉を残している……“マジレスかっこ悪い”と……!


『お前が一番かっこ悪いからな?』


 シインの発言は全力で聞こえないフリをし、僕は気を取り直してスキルに集中!


 さあ! さあ来い! 憧れの眼差(まなざ)しで僕の元へ(つど)うがよい! もろびとこぞりてかかってこい!!


 そういえば希望者の中にけっこう女の子も混じってたっけ。


 うわ~困るなあ。憧れと尊敬(そんけい)の瞳で女の子達に取り囲まれてさ。「ちょっと~この人はわたしと組むのよ~」なんてさ。女子に取り合いされておいおい僕は物扱いかい? 分かった分かった順番だぜウフフ。


『うおコイツキメえっ!!』


 キモイだとお! 健全な男子が健全なハーレム妄想するのがそんなにキモイか! 僕には夢を見る資格すらないというのか!!


『妄想は自分の部屋の(すみ)で体育座りしながら見る。それがマナーだぞ』


 勝手に妙なマナーを押しつけるんじゃない! 貴様のような奴がいるから謎のマナー講師が量産される世の中になるのだ!!


『いやいやいや……ん?』


 シインが何かに気づく。どうやら僕の背後に誰かがいるようだ。


「あの……」


 来たっ! ついに誰か話しかけて来た! しかも声の感じからして女の子じゃあないか!


 期待に胸を膨らませて振り返ると――想像以上の娘がそこにいた。


 まるで陶器のように白く(つや)のある肌に、一際(ひときわ)目を()く金の瞳。ややウェーブの掛かった白っぽい金の髪……とてつもない美人だった。


「あ……その、ボクは、アイルゥ……といいます」


 しかもボクッ娘とは……フェティッシュだな!


『お前ちょっとテンションおかしいぞ?』


(いやテンション上がりますよ! いきなりこんな超美少女が来たら爆上げですよ!?)


 小声でシインとそんなやりとりしてたら、す、とアイルゥが右手を差し出した。


「パートナーに……なって、くれる?」


 YES!!


 降って()いた幸運に僕がガッツポーズすると、アイルゥはきょとんとした表情。


「……OK、ってこと?」


 あ、そうだった! うん、こちらこそどうぞ、末永くよろしくッ!!


 手の平の汗を素早く(ぬぐ)い、アイルゥの手を強く握りしめた。


 すると――先ほどまで無表情でクールな表情をしていた彼女が、やや(ほお)を赤らめて、少しだけはにかんだ。


 ぬおおっ!? こ、これは――バラ色の訓練生生活が始まる予感っ!!


 心の中で浅草サンバカーニバルが絶賛開催中の僕だったが、ふと近くの希望者たちから気になるセリフを聞いた。


「オイオイオイオイ……」


「死ぬぞアイツ……」


 ん? え? なに? どういうこと?


「“地獄のアイルゥ”じゃねえか……なんであの女がここに……?」


「知ってるぞ……あの女とパーティーと組んだ奴はほぼ全員病院送りになってるとか。まだ意識が戻ってない奴もいるらしい……」


「S級ダンジョンをソロで踏破(とうは)できる実力を持つが、あまりの強さに敵だけでなく、味方まで攻撃の余波(よは)で全滅する……ついた仇名(あだな)が“地獄のアイルゥ”。出くわせば、敵も味方にとってもまさに地獄を見るってわけだ……」


 …………


 僕は震えながら、ゆっくりとアイルゥへ振り返る。


 彼女は周囲のウワサ話に対して、小さく肩を落とした。


「……そうなんだ。みんなボクとパーティーを組んでくれなくて……あなたがパートナーになってくれて、本当に嬉しい……」


 いやあああっ!! タンマタンマタンマーっっ!!


『まあまあとりあえず落ち着けよ』


(これが落ち着いていられるかっ!! 僕の命が掛かってるんだぞ!?)


 アイルゥに聞こえないよう、ボリュームを落としてシインに反論する。


『元々強い奴と組むつもりだったんだろ? 良かったじゃねえか目論見(もくろみ)通りになって』


(強すぎるんだよ! 味方まで病院送りにする人と組めるもんか! もう実家に帰らせていただきます!!)


『帰れねえだろ実家……ああそっか。そういや嫁連れてきたら帰れるんだよな? よかったな可愛いお嫁さんができて』


(いや“地獄”とかいうアダ名が付いてる人と()()げるとか絶対無理だから! S級ダンジョン一人で攻略できる人ですよ!? S級っていったら国が1個大隊(だいたい)率いて攻略するレベルの場所ですよ!? 無理無理無理こんな人外さん普通に無理っ!)


『ん? そういやここって冒険者を養成する場所だよな? そのアイルゥって娘はもう冒険者として活躍してるんじゃないか? なんで試験を受ける必要が?』


(知るもんかそんなこと……うう困った、今さらパートナー解消しようとか言ったら……)


『……けっこう嬉しそうにしてたもんな。今さら断ったらすげー傷つくだろうし、もしかすると(うら)まれるかも……』


 ()んだ……もうだめだ、おしまいだぁ……!


 僕が頭を抱えて絶望していると――二人組の男が、僕達に話しかけてきた。


「フフっ、地獄のアイルゥに謎の存在感を放つ少年……なるほど興味深い」


「お前達の力を試させてもらう。見事、この金の羽を奪ってみせよ!」


 カイゼルヒゲに縦ロールヘアーをした細身の男と、筋肉モリモリのタンクトップ男の二人組。


 どうやらこの二人が試験官のようだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ