あなたのあいじん
あたしの唇はとても意地っ張りだ。
彼に、愛を伝えられない。
あたしの指はとても意地っ張りだ。
一通のメールも送れない。
彼の手はあたしをとても優しく撫でる。
とても、優しくて、あたしは泣きたくなる。
その手で、私以外の女も撫でるのかしら。
きっとあなたは困るから、聞かないけど。
あたしは、あなたの愛人。
メールが来ると、一瞬びくっとしてしまう。
震える携帯を手に取り、ため息をつく。
「ちぃ、か。」
友達には悪いけど、あたしが待ってるメールは違う。
そりゃ、そうだ。軽く笑ってあたしはメールを打ち返す。
昼間に、あの人はメールをしてこない。
解ってるのに、あたしはそれでも待ってしまう。
忙しい人だから。
仕事も、プライベートも、きっと。
あたしが知ってるのは、月に1、2回あたしの住む街に出張に来ること。
奥さんと子供が2人。
お酒が、好き。あの人が酔っているとこなんかみたことない。
煙草はマルボロのブラックメンソール。
たまにブラストのチェリーを吸ってる。
あとは、36歳で4月7日が誕生日。
それから、あたしに優しい手で触れる。
一度触られたときから、あたしはあの手に恋い焦がれてる。
泣きたくなるくらい優しい、手がすき。