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プロローグ

「残念ですが、あなたの冒険はここで終わりました」

 ――そんなクソみてぇな文言から始まる冒険だってある。気づいた時、俺は真っ暗闇の中で謎の声を聞いていた。

 不思議な力でも働いているのか、そこで直感的に理解した。どうやら、自分――しがないサラリーマンの山本緑郎は今生の命を終えてしまったらしい。

 そりゃそうだ、毎日毎日日付けが変わるまでの残業。からの始発通勤。まともな人間からやめていくという我が職場において、生き残った上司に当然人の心と部下への理解があるはずも無く。デスマにデスマを重ねた結果、自分は会社のデスクでひっそりと心筋梗塞で死んだのだ。

 いやー、ストレス発散の勢いで自分しか読めないプログラム組んどいて良かった。バグが起きたら誰もアクセスできなくなるデータベース。震えて眠れや残党ども。

 ともあれ、そうなると気になるのはこの謎の声である。じっと続きを待っていると、また美しい女性の声が降り注いできた。

「山本緑郎……あなたは、あちらの世界では大変な苦労を重ねられたようですね。生涯の伴侶を得ることもなく、ただただ誠実に仕事に邁進した……」

 ……モテないという事実も、なんだか人の良さそうな声の主にかかればかような表現になるものである。

「神は人の子を見ております。苦難多きあなたに報いるため、素晴らしいスキルを与えた上で新たなる生を与えましょう。さあ、目を覚ますのです――!」

 ほほう。つまり、チートをくれた上で異世界転生をさせてくれると。やったぜ、そうこなくっちゃ。ボーナスも出ねぇクソ会社に長年勤めた甲斐があるというものだ。

 で、女神様。俺はどんなスキルを手に入れるんですか?

「……あちらの世界で得られなかったものを……あなたに……」

 ふんふん、何かな? 財かな? 武力かな?

「……愛され力……」


 何て?


 返事は無かった。俺の意識は、光の中へと落ちていった。

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