99.裏庭へ
裏庭に行くと、数名の騎士たちが一人を囲んでいた。
その人物は上から毛布をかけられ、柔らかい簡易クッションで横になっていた。
「リリ……っ!」
アリシアさんはそう言うと、横になっている人物の元へと駆け寄る。
隙間からチラッと見たところ、その人物は女性のようだった。
「リリ……! しっかりなさい! リリ……!」
アリシアさんが必死に呼びかけるも、応答はない。
まさかとは思うが……
「良かった、息はありますね」
すぐに脈を確認したところ、生きている様子。
普通に気絶しているだけのようだ。
「いつここに彼女がいると知ったのですか?」
「ほんの数分前です。護衛の一人が見回りで裏庭に出たところ、草むらの中に異変を感じまして。確認してみたところ、彼女が下着姿のまま気を失っていたんです」
下着姿のまま……か。
これは新情報だな。
先の話から繋げると、例の犯人はあの使用人の女性から服を奪い取った……ということか。
となると、後はその犯人がどうやって潜入したか……ということだけだな。
まぁそこを解明するのが、鬼門なんだが……
「ランス、これって……」
「ああ。どうやらあの使用人に話を聞く必要があるみたいだ」
現状手掛かりを見つけるにはそれしかない。
イリアに続き、直接的に犯人が手を下した人物だ。
何か知っている可能性は高い。
「とにかく私は彼女をベッドルームへ運びます。皆さんは状況の確認と近辺の調査をお願いできますか?」
「かしこまりました。申し訳ありません、我々がついていながら……」
「過ぎたことを悔やんでも仕方ありません。屋敷の警備も怠らずにお願いしますね」
「はっ、仰せのままに!」
騎士たちはビシッと敬礼をすると、警備組と調査組で分かれて行動を開始する。
アリシアさんは気絶している女性をひょいと盛り上げると、
「彼女は私が連れて行きますので、皆さんはリビングで御待ちください。すぐに戻りますので」
「分かりました」
そういうとアリシアさんはタッタと歩いていった。
「う~ん、不可解なことばかりだ」
「これは難解ですね」
「でも手掛かりは増えたわ。この調子でいけば犯人を見つけることができるはずよ」
「……だといいんだけどな」
仮に今まで起きたことや、見たことが全て繋がっているとしたら……
(明日の計画決行と同時に何かが始まる)
そんな予感がする。
でも一つだけ確実なのは、今の王都含め状況が異常だということだ。
これは恐らく普通の計画じゃない。
前々から念入りに決められていたか、あるいは……
「ランス……? どうしたのですか? そんな怖い顔をして……」
「え、そんな顔してたのか? 俺は……」
「は、はい。なんかこう、思い詰めているような……」
思い詰めている、か……
もしかしたら考えすぎなのかもな。
様々な憶測が出せるからこそ、考えすぎてしまうんだろうけど。
「ちょっと休憩しよう。お茶でも飲みながらさ」
「そうですね。一息つきましょう」
「賛成~~~~! あ、ランス。わたしは紅茶とグリーズクッキー(王都名産のアイシングクッキー)ね!」
「また俺が淹れるのかよ~」
「だってランスが淹れる紅茶、美味しいんだもん」
「あっ、じゃあわたしもお願いします~!」
「ソフィアまで……まぁいいけどさ」
今はあまり深く考えないようにしよう。
ソフィアの言う通り、考えすぎてもよくないしな。
俺はそう心に言い聞かせながら、ソフィアたちと共にリビングへと戻るのだった。




