96.発見!
「この辺にいるはずなんだが……」
イリアを探してから一時間。
俺たちは王都内にある公園へとやってきていた。
だいぶ前にイリアと初めて出会った都内公園だ。
一瞬だったが、ここで少し大きな魔力とイリアと思われる魔力を検知したのだ。
「探すぞ、ソフィア。恐らくこの近くにいるはずだ」
「はい!」
俺とソフィアは公園内を歩きまわり、探し始める。
すると、
ら……ん……す……
「ん、今の声……」
微かに聞こえてきた誰かの声。
辺りを見渡してみるが、人の気配はない。
探知魔法にも引っかかっていないので、気のせいかと思ったが……
バサッ!
「……ッ!?」
突然何かが倒れるような音が。
そしてたまたま目に入った遊具の影に人の手だけがチラッと見えていた。
(ま、まさか……)
俺はすぐにその遊具に駆け寄る――と。
「い、イリア!」
遊具の影に隠れていたのは身体中ボロボロになったイリアだった。
着ていた服も破れ、顔や手には痣のようなものが数か所もあった。
(一体何がどうなって……)
情報の処理が追いつかない。
ただ、その傷跡を見て今自分がやらないといけないことはすぐに分かった。
「ソフィア、来てくれ! イリアを見つけた!」
大声で叫び、ソフィアを呼ぶ。
「ランス、イリアさんは――っ!?」
ソフィアも俺と全く同じ反応だった。
というかソフィアの方が衝撃が強かったらしく、しばらく黙ったまま動きもしなかった。
「ランス、これは一体……」
「分からない。でも今は傷の治療が先だ。やれるか?」
「も、もちろんです! やります!」
俺は一旦抱えていたイリアを寝かすと、ソフィアと立ち位置を交代する。
すぐに俺がやってもよかったのだが、ソフィアの方が高レベルの回復魔法を行使することができるからな。
完全に傷を癒すにはソフィアがやってくれた方が確実だ。
「……――……」
俺の思った通り、ソフィアの回復魔法でイリアの傷はどんどん癒えていった。
痣はすっかりと無くなり、二分くらいで完全にイリアの身体から傷はなくなった。
幸い、あまり傷自体が深くなかったから大事には至らなかった。
「……ふぅ、もうこれで大丈夫です。動けますか、イリアさん?」
「え、ええ……ありがとう、ソフィア」
「お安い御用です! あ、まだ無理に身体を動かさないでくださいね」
身体は完全に回復したとはいえ、心の傷までは癒すことはできない。
見た目は大丈夫そうでもイリアの声は少し震えていた。
「イリア、話せそうか?」
一応確認を取ると、イリアは小さく頷く。
俺たちは一度公園のベンチに場所を移すと、イリアに事の真相を聞いた。
「一体、何があったんだ? なぜお前がここに……?」
あまり圧をかけないように、静かに真相を問う。
イリアは少し間をあけつつも、その小さな口をゆっくりと開き、
「盗まれたのよ、聖剣が」
そう、答えた。