92.行方不明
「イリアさんが行方不明に!?」
「ああ。今アリシアさんたちと一緒に探しているが、まだ見つかっていなくてな」
ソフィアが城から帰ってきた後、俺はすぐ彼女に情報を伝えた。
あれから、アリシアさんたちとかれこれ30分くらい捜索に当たっているが、未だに成果なし。
屋敷を出ていく故が分かるものも何一つなく、屋敷の周辺も一応探してみたものの、人っ子一人いる気配がなかった。
「私もお手伝いします。まだいなくなってから30分くらいしか経っていないのなら、そう遠くへは行ってないはずですから」
「すまん、頼む」
ソフィアも捜索のメンバーに加わることに。
でもなぜ急に消えたのか?
誘拐?
いや、屋敷の中でそれはあり得ない。
俺も近くにいたし、第一他の人が見てないはずがない。
しかしあともう一つ不思議な要因がある。
それは、屋敷の武器庫にあった聖剣も無くなっていたことだ。
もしやと思うが、イリアが持って行ったのだろうか?
「いや、流石に無いな」
持っていったとしても何のために?
まさか質屋に売りに出しにいくわけじゃあるまいし。
「どうしたんですか、ランス?」
「ああ、いや何でもない。独り言だ」
「そういえば、例の武器庫が数十年ぶりに開かれたそうですね」
「あ、やっぱり知っていたのか」
「はい。と言っても存在自体、噂程度でしたけど……」
一応アリシアさんから例の部屋のことは内密にと言われている。
別にソフィアに隠す必要は全くないと思うんだが、一応黙っておくことにしていた。
でもあの部屋の存在を知っているのなら、その必要はなくなった。
俺は聖剣のことも含め、再びソフィアに事情を説明した。
「じゃあ、その聖剣をイリアさんが?」
「いや、それはまだ分からない。あくまで可能性の話だ」
イリアの失踪。
そしてそれと同時期に起こった聖剣の消失。
うーーーーーーーん………………
(分からん! 全くもって分からん)
何がどうなったのか、想定すらできない。
(とにかく探しまくるしかない)
それに、聖剣も探さないといけない。
アリシアさんの焦りを見た感じ、あれは恐らく外に出してはいけないものだ。
研究のことを盛んに行っていたから、間違いない。
やはり一般庶民には想像もつかないような闇があるのだろう。
それから俺たちは手当たり次第探した。
屋敷の周りは特に入念に。
だが収穫はなし。
足跡すらも掴むことができなかった。
「くそっ、一体どこ行ったんだ?」
「全然、見当たらないですね……」
動き回っていたためか、互いに額から汗が大量に滲み出てくる。
朝からずっと動いているので、身体もそれなりに疲労が溜まってきた。
でも簡単に諦めるわけにはいかない。
「捜索の範囲を広げてみるか。もしかしたら王都の方に行ったのかもしれないし」
「そうですね。この辺にいないとなると、街の方を探した方が良さそうです」
「よし、じゃあ早速行くか。悪いが、もう少しだけ付き合ってくれソフィア」
「もちろんです! 友人とランスのためなら、たとえ火の中水の中です!」
意気込むソフィア。
その気合いに背中を押されるかのように俺も額の汗を拭うと、ソフィアと共に王都へ向けて走り出すのだった。




