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09.その日の夜

総合ポイント1000PT越え、ありがとうございます!


「あぁ~疲れたぁぁ!」


 やっとのことで王城から宿へと帰宅。

 時間を見てみたらもう夕暮れ時。

 

 季節の関係もあってか、外はもうほぼ真っ暗だった。


「なんかすごいことになっちゃったな……」


 もう明日から早速王女さまとのウキウキ冒険者ライフがスタートする。

 最初は査定を受けた翌日にさっさと地元に帰ろうと思っていたが、滞在期間は延長になった。


「ま、別に帰ってもやることなんてないからいいんだけど」


 だがそんなことよりも、驚いたことが一つあった。

 それは王城を出る際に貰った大きめの巾着袋にある。


 その中に入っていたのが、


「金貨10000枚ってヤバくないか? 下手したら都に家が建つレベルだぞこれ……」


 そう、お金だった。

 しかも驚くなかれ、これは前金として貰ったもの。

 

 これから月ごとに金貨1000枚が俺の銀行口座に振り込まれる。

 

 国王陛下曰く、我が娘の面倒を見てくれることのお礼として受け取ってほしいとのことだが……。


「確実に拘束されたよな、これは……」


 あんな啖呵をきった以上、最後まで責任を持ってソフィアの面倒を見るつもりだ。

 それをいつまでやれば……というのは具体的に聞いていないため分からないけど。


「ま、今は明日からのことを考えるのが先だな」


 俺はググッと伸びをすると、自室のベッドにダイブする。

 

「ふぇ~」


 なんとも気の抜けた声でゴロゴロとベッドの上を右往左往。

 今日はもう今すぐにでも寝れそうなくらい疲れが溜まっていた。


「明日も朝早いし、もうそろそろ寝ないと――」


 と、思っていた時だった。


 ――コンコン


「あ、あのぉ……ランスさんはいらっしゃいますか?」


 扉の向こうから聞こえてくる聞き覚えのある声。

 

(この声は……まさか!)


 俺はすぐにベッドを出て扉の施錠を解く。

 そしてゆっくりと扉を開くと、


「そ、ソフィア!? それに、アルバートさんも!」


「こんばんは、ランスさん」


 ぺこっとお辞儀をするソフィア。

 同時にアルバートも軽く会釈してくる。


 ソフィアはさっきの同じ白いローブに身を包み、アルバートさんも鎧ではなく黒ローブで身を隠していた。


「いきなり押しかけてすまぬな、ランス殿。少しだけ貴殿に話があってきたのだ」


「話……ですか?」


「うむ。今、時間は大丈夫だろうか?」


 

 ♦



「夜分遅くにすまないな」


「ごめんなさい、ランスさん。本当にいきなりで……」


「いえいえ。それよりも、お話って?」


 ……というわけで部屋に上がってもらうことにしました。

 こんな夜にわざわざ人目を忍んでまで来るなんて何の用だろうと思いながら、俺は二人に詳しい話を要求した。


「例の魔物騒動についてのことなんだが……」


「イェーガーウルフのことですか?」


 そう訊ねると、アルバートさんはコクリと頷いた。


「うむ。実はあの事件の後、我々騎士団宛てにギルドからイェーガーウルフについての共同調査に参加してほしいとの依頼があってな。ギルドの上層部から調査の際には証人も連れてきてほしいと先ほど通達があったのだ」


「証人というと……俺とソフィアのことですか?」


「そうだ。そして明日の昼、その共同調査が行われることとなった。もうここまで言えば既にお分かりになっていると思うが、貴殿には我々と共に調査に同行してほしいのだ」


「なるほど。ですが、調査とは具体的になにを?」


「別に調査と言ってもそこまでたいそうなことをするわけではない。ただの現場調査だ」


 現場調査か。

 ギルドとしては他の冒険者や王都に住まう民のためにも原因究明を急ぎたいってところだろうか?


 そういうことなら別に断る必要もない。

 どっちにせよしばらくは王都に滞在することが決定したのだ。


 俺は何も考えることなく、すぐに返事をした。


「事情は理解しました。明日の昼ですね?」


「ああ。明日の昼に魔物が発生した森林地帯の入り口まで来てほしいとのことだ」


「分かりました」


「すまないな。手間をかけさせてしまって……」


「いえ、むしろお役に立てるならと思っているくらいですよ」


 どうせ明日からのことはノープランだったんだ。

 むしろ予定が出来て良かった。


 それに、ギルド側に一個借りが作れるし。


「そう言ってもらえると助かる。では、我々はこれにて失礼させてもらう。寛いでいたところにすまなかったな」


「わたしからもお礼を申しあげます、ランスさん」


 二人は会釈すると、扉の方へ。

 すると急にソフィアは立ち止まり、俺の方へ視線をあわせてきた。


「あ、あのっ……! ランスさん!」


「はい?」


 呼びかけられるオレ。

 ソフィアは何故だが顔を赤くし、モジモジしながら、


「そ、その……ふ、ふつつかものですが……これからよろしくお願いします!」


 ぎゅいんと頭を下げてきた。

 俺もその勢いに負かされる形で返事する。


「こ、こちらこそよろしく。あ、あと俺のことはランスで構わない。もちろん言葉も砕けた感じで……ってむしろそっちの方が話しやすいというか……」


「わ、分かりました! では、明日からそうさせていただきますね!」


「お、おう……」


 ソフィアは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 まるでつぼみが開いて花が咲いたかのような笑顔だった。


「じゃあ、わたしはこれにて失礼します。おやすみなさい。えーっと……ランス!」


「お、おやすみ……」


 ソフィアは最後にまたペコっと頭を下げると、スタスタと去って行った。

 

 俺はローブで隠しきれていない白銀の髪を見ながら、思った。


 なにあの子……めっちゃ可愛いんだけど。

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