82.闇の計画
「お、王都占領計画……だと！？」
俺は一瞬、自分の耳を疑った。
驚きで思わず、声を張り上げそうになる。
「王都占領って……やっぱり俺の予想は……」
そうであってほしくはなかった予想。
俺はそんな衝動を抑えながらも、話を続きを聞くことに。
「皆さんも知っての通り、我々は明後日の晩に王都占領計画を敢行する予定です。ですが、少し計画に変更が出たようでですね。そのことで筆頭からお話があるようで、今日は集まっていただいた次第です」
「突然、邪魔して悪い。帝国軍先陣部隊筆頭のヴェルムだ。まずは、今回の計画に協力をしていただけることに感謝を申し上げたい」
帝国軍の、しかも筆頭だって？
ってことはあの大柄男はやっぱり帝国の……
「ということで、筆頭。計画の変更とは一体どういうことで？」
「実は例の計画だが、明日の晩に早まることが決定した。閣下直々の命令でな」
「ほう。とうとう向こう側が動き出した、ということですか？」
「流石に我々の工作活動に感づいたようでな。国の動きも活発になり始めている」
「なるほど。だからこそ、早めに先手を打っておきたいと」
「ああ。ちなみにこっちの準備はもう完了している。後はお前たち術式師の準備次第だ。アレを起動させるにはお前たちの力が必須だからな」
「分かりました。一応内部に潜っている人にも伝えておきます」
「頼む。仮に問題が起きたら、潜入している奴らの力を借りねばならない。そっちの方は頼んだぞ」
「お任せを」
話はどんどんと進んでいく。
しかし残念なことにそろそろ付与した魔法の効果がきれる時間に達しようとしていた。
（もうすぐ時間切れか。くそ、ここからが重要だってのに）
とはいえ、こんなところで見つかったしまったら意味がない。
見つかれば向こうは確実に計画を変更するだろうし、この有益な情報はそのまま持ち帰りたい。
とりあえず計画の大まかな全容は知ることが出来た。
まさか予想的中するとは思ってもいなかったが、この情報を掴めたのはかなり大きい。
今すぐにでもギルドと国の方に伝えにいきたいレベルの情報源だ。
（くっ、もうダメだな。ここはひとまず引き上げよう）
効果がきれて向こうに感づかれたら逃げ道がなくなる。
あの大柄の男の話によれば黒ローブの集団は術式師らしいし、尚更だ。
（とりあえず、みんなのとこへ戻ろう）
俺は姿勢を低くしながらも、静かにその場から立ち去る。
「あ、そうだ。水を買って帰らないと」
帰る最中、咄嗟に思い出すイリアの願い。
衝撃を知ってすっかり忘れてしまっていた。
「だいぶ時間経っちゃったけど、大丈夫かな……」
帰ったらすぐにみんなに謝ろう……
そう心に誓うと。
俺は帰りに水を買っていき、ソフィアたちのいる噴水広場まで駆け足で戻るのだった。
