表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/167

62.依頼


「いきなりすまないな。こんな時間に押しかけてしまって」


「いえ。それよりもお二人とも揃って何かあったんですか?」


 場所は客間へと移る。

 アルバートさんとレイムさんが隣同士で腰をかけ、その向かい側のソファに俺がいるという配置だ。


 それも今回、アルバートさんたちが訪問したのは俺に用があるとのことで、ソフィアとイリアには席を外してもらった。


 その内容はまだこれからだが様子を見る限り、重大なことっぽい。


「今日我々が屋敷に訪問したのは例の一件でランス殿に協力してほしいことがあってな」


「協力? 何かあったんですか?」


「うむ。この話は数日前に国の諜報機関が極秘に入手したものなんだが、この王都のどこかに帝国のスパイがいるようなのだ」


「す、スパイ!? ってあのスパイですか?」


「そうだ。しかもその目的が王国と帝国の戦争を促すためらしい」


 おいおいおいちょっと待て。

 

 話のスケールがいきなり大きすぎてついていけないんだが?


「え、えっと……マジですか?」


「マジだ」


 真顔で「マジだ」とアルバートさん。

 隣のレイムさんに目を合わせると、彼女も無言でコクリと頷く。


 どうやらこの話は嘘でも何でもなく本当のことらしい。


「で、でも一体なんで戦争を? 帝国と王国ってそんなに仲が悪かったんですか?」


「仲が悪いというか、元々帝国と我が王国は5年前の戦争以後から少々張り詰めた関係でな。今は大陸間戦争の時に交わした大陸国家平和条約で何とか体裁は保っているが……」


「向こうも痺れを切らしたのかもしれない。今の在位している帝王閣下は特に反王国の思想が強いみたいだからな」


 5年前の大戦争か。

 正直、俺は勉強嫌いだったから政治とかに関心が全くない。


 戦争についても木の机の上で教授が言ったことをただノートに書き記して、その知識を覚えた程度だ。


 でもこうして真面目にそんな話を突き付けられると、考えたくなくても深く考えてしまう。


 今の俺はもう立場だけでいうなら一般人の枠を超えている。

 地位などの不透明なところから見れば俺はただの一般王国民に過ぎないが、透明なところを見れば国側の人間なんだ。


 政治や国自体に興味がなくとも、そっぽを向くことはできない。

 というか多分、それは今の俺が許さない。


 だってこの国を心の底からよりよくしたいと考えている人がそばにいるから。

 そして俺はその人のパートナーとして、ここにいるのだから。


「国はどうするつもりなんですか? そのスパイを捕まえる算段を立てているとか?」


「実は、まだ我々はその件に関して動いていないんだ。いや、厳密に言えば”動けない”んだが」


「動けない? なぜです?」


 首をかしげる俺にレイムさんが口を開いた。


「証拠が不十分なのだ。そのスパイがいるという情報も不透明なことが多くてな。諜報機関の情報も不審な動きをする集団がいたというだけで、正直今は噂程度にしかなっていない」


「な、なるほど……」


 不審な動きをしただけでスパイ扱いか。

 その不審な動きの程度にもよるが、いきなりそんな判断を下すのは中々手厳しいな。

 

 国の諜報機関ってのは常日頃から王都内を監視しているらしいから、俺も下手なことをしないように気をつけないとな。

 無実でそんな罪を被されたらたまったもんじゃない。


 ただでさえ、俺の傍にはソフィアがいるんだし。


「お話はよく分かりました。ですが、俺に協力してほしいことって一体何なんですか?」


 聞いた感じ、俺にできることなんてない気がする。

 でもこんな時間に国の重要人物二人が失礼を承知の上で乗り込んできているのだ。


 俺にしかできないこと……と言えば少し嫌味な感じになるけど、実際そうなのかもしれない。


「ランス殿。ソフィア様の護衛を務める貴殿に折り入って頼みがある」


 俺の質問にアルバートさんは真剣な表情で話し始めた。

 一瞬たりとも俺の目から視線をそらさず、その鋭い目つきから真剣さが強く伝わってくる。


 俺はその目つきにゾクゾクしながらも目を合わせ、「はい」と少し掠れた声で返事をすると、


「貴殿のその類稀なる魔法で、そのスパイを見つけ出してもらえないだろうか?」

 

 アルバートは一言一句噛むことはなく、前に聞いた通りの太く低い声でそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻冬舎コミックス様より
コミックス4巻発売中!
現在「comicブースト」様にて好評連載中です!
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件

i801353


↓comicブースト様連載サイト↓
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件



↓幻冬舎コミックス様紹介サイト↓
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件



アルファポリス様より
小説2巻発売中!
無能と蔑まれし魔術師、ホワイトパーティーで最強を目指す

i801359


↓アルファポリス様紹介サイト↓
無能と蔑まれし魔法使い、ホワイトパーティーで最強を目指す

― 新着の感想 ―
[一言] 次回投稿が楽しみ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ