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06.宴が始まりました。


 俺は今、色々な出来事を経て王城にいる。

 で、俺はどういうわけか国王陛下と顔を会わせることになった。


 今、目の前にある扉の向こうに陛下がいらっしゃる。


 ふぅ~っと深呼吸。

 

 そして、両側にいた使用人たちがゆっくりと扉を開扉させると――


「うぉぉぉぉぉぉぉぉソフィアァァァァ! 大丈夫だったかぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 うわっ、なんだなんだ!?


 扉を開けた途端、全速力でこっちに向かってくる人の影。

 そしていつの間にかその人影はソフィアの前に。


「お、お父様!?」


 ソフィアもかなり驚いていたようで唖然としていた。


「ソフィアよ、ケガはないか? あっ、この辺ケガしてそう……」


「お、お父様! わたしなら大丈夫ですから。それよりも、お客様の前ですよ!」


「はっ、そうであった!」


 国王は我に返ると、視線は俺の方にシフトする。


「おお、貴殿がランス殿であるか! ようこそ、我が城へ! 私がグリーズ王国国王のフォルト=フォン・グリーズだ!」


「お、お初にお目にかかります。フォルト国王陛下殿……」


「娘が世話になったようだな。本当に感謝する!」


「い、いえ……自分は当然のことをしたまでです」


 すぐに片膝を立て、姿勢を低くする。

 決して無礼があってはならない。


 何せ相手は一国の長。俺とは住む世界が違うのだ。


 だがフォルト国王はそんな俺の姿を見ると、


「顔をあげてくだされ。本来ならば、腰を折るべきなのは私の方だ」


 そう言ってくる。

 しかも目線を俺にあわせてくると、


「本当にすまなかった。貴殿には何とお礼を言えばよいか……」


「あ、頭をあげてください陛下! 自分は別に……」


「いや、そうはいかぬ! 我が娘を身を挺してまで守ってくださった御方にお礼一つすらいえないようでは国王の名が泣く。どうか、頭を下げさせてほしい」


 下げさせてほしいって……。


(絵面的にはとんでもないぞ、今の状況……)


 なんたって普通の平民に対して国王が頭を下げているのだから。

 

 物凄い感謝されているのは分かる。


 でもなんか罪を犯している感じがしてならなかった。


「ランス殿、どうぞお好きな席へ。すぐに宴の用意をさせよう」


「し、失礼します……」


 というわけで俺は国王陛下が座る席から一番遠い席をチョイス。

 すると、


「ランス殿! そんな遠くに行かず、こっちに来てほしい。何なら私の隣でも構わないぞ」


「いやさすがにそれは……」


 というかさっき”お好きな席に”って言ったじゃん。

 

 ……ってもちろんそんなツッコミをできる勇気なんて当然なく、俺は国王陛下のすぐ近くに腰を落ち着かせた。

 

 ちなみに国王は長テーブルの一番奥。

 アルバートさんは俺の隣、ソフィアは俺の目の前に座った。

 

 他にも何か如何にも偉そうな人たちが同席し、全ての準備が整った。


「さて、役者も揃ったことだし、宴を始めようぞ」


 そういうとフォルト国王はパンパンと二回手を叩く。

 

 すると、テーブルを囲むように並んでいた使用人たちが一斉に動き出した。


(うわっ、すげぇ! 軍隊みたい)

 

 無駄のない動きでテキパキと作業をしていく。

 そしていつの間にかテーブルは沢山の料理で彩られていた。


(やばっ、めっちゃうまそう……)


 思わずヨダレが出そうになる。

 そういえば王都に来てからロクに食事をしていなかったな。


 カネがないから最低限の物しか食べれず、食事も一日に一回ならベター。


 だから酒場の前を通っては空腹を匂いだけで我慢した日もあった。


「では、ランス殿。料理を前に悪いが、少しだけ彼らの紹介をさせていただきたく思う」


 ”彼ら”というのは多分同席してきた人たちのことだろう。

 

 正直、今すぐにでも料理に手をつけたいところだが、ここは王城での気品高き食会。

 流石にがっつくわけにもいかない。


 そこらの大衆酒場とはワケが違うのだ。


 俺はその紹介とやらを聞くことにした。


「では、まずは我が愛しの――」


「お父様! その言い方は止めてくださいって前にも言ったじゃありませんか!」


 なんかソフィアが国王の紹介の仕方にダメ出しをし始めた。

 ダメだしされた国王も「うっ」と顔を歪め、


「べ、別にいいではないかソフィアよ。お父さんは本当にソフィアのことを――」


「それは二人きりの時に言えばいいじゃないですか! 今回はお客様もいるのですよ!?」


「んもう……相変わらずソフィアは堅いなぁ……」


「お父様が無神経なだけです!」


「ぐぬぬっ……!」


 おいおい、なんか身内で喧嘩は始まったぞ?

 というか二人きりならいいのね……。


 だがすぐにソフィアは我に返ると、


「はっ、申し訳ありませんランスさん。お見苦しいところを……」


「い、いえ……お気になさらず」


 見苦しいというか逆にほっこりした。

 王族ってもっと厳格なイメージがあったから少し驚いたけどね。


「ご、ゴホン! では、引き続き紹介を……」


 あ、続けるのね。

 ……というわけで気を取り直して紹介を続けることに。

 

「もう娘から紹介があったとは思うが、貴殿の隣にいるのが騎士長のアルバートだ」


「改めて宜しく頼む、ランス殿」


「こ、こちらこそ……」


「そしてその向こう側にいるのが、王宮魔法師団師団長のレイムだ」


「宜しく、ランス殿!」


「お、お願いします……」


(レイム……? ってまさかあの!)


 レイム=キルヒ・アイゼン。

 先の大戦では万人殺しと言われた最強の魔術師。


 通称『紅蓮の女神』。


 俺も学生の頃は宮廷魔術師に憧れていたもんだから、この人の名前は何度も耳にしたことがあった。


 今までは魔術書に載っていた写真でしか見たことがなかったけど……


 実物は写真以上に綺麗な人だった。

 

 さらっとした赤い髪に透き通った真紅の瞳。

 スタイルはもちろん、出るとこはしっかり出てて女性としての魅力もグッド。


 その美貌に思わず目が一点に集中してしまう。


「ん、どうしたランス殿。何か私の顔についているか?」


「え、いや……」


「お前の顔があまりにも老け過ぎていて驚いたんじゃないか? なんだこの若作りババアはってな。はっはっは!」


「あ? おいお前、今なんつった?」


 ……え。


 突然始まる騎士長閣下と師団長閣下のリアルファイト。

 不幸なことに隣同士であったためか、バチバチと火花を散らし合う。


(え、どゆこと? 今何が起こってるの? てかレイムさん語調荒すぎない!?)


 唐突のことで情報の整理が追い付かない。

 気がつけば二人の争いはヒートアップしていた。

 

「ん、聞こえなかったか? 若作りババアって言ったのだが」


「……二度も言ったな、お前」


「お? なんだやる気か?」


「ああ。今すぐ表出ろこのクソゴリラ」


 あれ、何かヤバくないこの状況。

 しかもなんでみんな止めないんだ? 


 一番こういうのに敏感なソフィアも何か溜息ついて見守ってるし……


「お前たち、今は宴会の席だぞ! 何をやっている!」


「「……ッ!」」


 と、ここでようやく国王陛下が直々に二人に忠告。

 二人の動向はその瞬間、ピタッと止まった。


「「も、申し訳ありません、陛下!」」


 お、息ぴったり。

 

 二人は同時に謝罪する。

 それでも尚、顔を会わせて睨み合っているけど……。


(な、なんかすごいな……色々と)

  

 度重なる出来事に圧倒される(色々な意味で)。


 でもまさか国家騎士の団長さんのみならず宮廷魔術師のトップまで出てきてしまうとは……。

 

 他にも国の参謀や各大臣など「おいおい今から国儀でもやるのかよ」ってくらい国の要人ばかりが大集結していた。


「さて、一通り紹介が終わったということでそろそろ宴と行こうか」


(お、待ってました!)

 

 ようやく始まる宴。

 もうお腹が空きすぎて頭がクラクラしかけていた。


 よ~し、今まで食ってこなかった分死ぬほど食うぞ!


 こうして。

 波乱の余興は幕を閉じ、宴は始まったのだった。

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