48.出発
あれから時が経ち、場所は王都から少し離れた平原地帯。
俺たちパーティーはモンスター討伐のクエストを受注し、目的地へと向かっている最中だった。
「ねぇねぇ、ランス」
「ん、どうしたイリア?」
「あのリベルっていう人、めっちゃイケメンじゃない?」
「ま、まぁ……確かにカッコイイな」
コソコソと耳打ちしてくるイリア。
リベルたちの一行が先導し、俺たち三人は後から付いていく形で歩いていた。
「あんなイケメンが冒険者やるって珍しいよ。もしかして結構良いお家柄の人だったりする?」
「お、鋭い考察だな。あの人は子爵家の出身らしいぞ」
「し、子爵!? ってことは……」
「ああ、貴族だよ。それも結構歴史のある名家らしい。あ、ちなみにその両隣にいるボルさんとルナさんも貴族家の出身だ」
「ま、マジ……? ということは今わたしたちって貴族様と同じ土俵で冒険者をやっているってこと?」
「そういうことだ」
「ひ、ひぇ~! そんなの初耳だよ!」
ま、そういう反応になるだろうな。
普通ならあり得ないことだ。
平民と貴族が同じ土俵に立つなんて。
「な、なんか心配になってきた……粗相を起こしたら、即刻憲兵団に逮捕……とかないよね?」
「そ、それは大丈夫だと思うぞ。……知らんけど」
「知らんのかい!」
「でも、リベルさんたちは身分差についてあまり執着するような人たちじゃない。いつも通りにやればいいと思うよ」
「い、いつも通り……ね」
爵位なんてお飾りだ、なんてことも言ってたし。
貴族が爵位を飾りだなんて言うのは非常に珍しいことだけれど。
「ま、粗相を起こした時はその時だ。頑張ろうぜ、イリア!」
「う、うん……」
肩に手をポンと乗せる俺に、自信なく肩を落とすイリア。
でもこれが平民のごく普通な反応なのだろう。
俺はまぁ……ソフィアというとんでもない人の世話役を任されているからか、あまり重大に感じないが。
いや、多分色々と麻痺しているんだと思う。
(俺も気をつけないとな……色々と)
そんな会話をしながらも、俺たちは目的地へと足を進める。
それからしばらく経ち、そろそろ目的地に着こうとしていた時、リベルは急に足を止めた。
「うん、この辺でいいだろう。みんな、俺の元に集まってくれ!」
急にかかる号令。
俺たちは足早にリベルの元へと駆け寄っていくと、
「よし、じゃあこれから軽く作戦会議を開こうと思う」
と、一言言い放った。
「さ、作戦会議ですか?」
「そう。多分ここがパーティーを組む冒険者とソロで活動する冒険者との大きな違いになると思っている」
「どういう意味でしょうか?」
「順を追って説明するよ。その前にみんなにはこれをつけてほしい」
そう言ってリベルから手渡されたのは、金属製の球体。
振るとカランカランと音が鳴った。
「……これは、振鈴?」
「その通り。これからみんなにはこれをつけてモンスター狩りをやってもらう!」
リベルはニヤリと笑うと、高らかにそう言った。