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43.聞いてみることにしました。


「あぁ……俺はなにやってんだ……」


 自室に戻るや否やベッドに腰をかけて頭を抱える。


「情けない……」


 そう呟くと、俺は溜息を吐きながら仰向けになる。

 鼓動はもうピタリと止まり、どくんどくんという音もすっかり聞こえなくなっていた。


「どんだけ意識してんだよ……」


 本当にあの時はどうなってしまうかと思った。

 よく分からないが、身体のコントロールが効かなかったのだ。


「絶対心配させちゃったよな……」

 

 ソフィアのことだからそうに違いない。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!」


 枕に顔を突っ込み、無駄な叫びをかます。

 それから数分ほど悶絶タイムが始まり、冷静さを取り戻した時はもう15分が経過していた。


「はぁ……」


 天井を見上げながら、本日二度目の溜息を。

 頭を枕に持っていくと、冷えた頭に腕を乗せる。


「どう思っているんですか……か」


 正直に言うと今の俺には答えが見つかっていない。

 ソフィアの過去のことを聞いたのもあってか、俺の心中は複雑化していた。


 色々な想いが混ざり合い、少々パンク気味になっていた。


「あとで一言謝っておかないとな……」


 とはいえ、そんな理由でソフィアを心配させてしまうのはよくない。

 一言くらい言っておかないとさらに心配させてしまうだけだ。


「……よし!」


 俺はベッドから降り、再びさっきの部屋へと戻ることに。

 

 だが、その時だ。

 突然ドアをノックする音が部屋中に響き渡る。


 そしてその後に一拍置いて声が聞こえてきた。


「そ、ソフィアです。大丈夫ですかランス?」


「そ、ソフィア!?」


 部屋の外から聞こえてくるソフィアの声。

 まさか俺が行く前に向こうから来てくれるとは……


 俺はそっと扉を開け、ソフィアを中に入れる。


「お、お邪魔します」


「お、おう……」


 会して早々、少しぎこちないというか微妙な雰囲気になる。

 俺は再びベッドの方に行くと、ソフィアにも声をかけた。


「す、好きなところに座ってくれ」


「じゃ、じゃあお隣に行ってもいいですか……?」


「と、隣!?」


 思わず変な声が。

 するとソフィアも慌てだし、


「す、すみません! いきなりすぎでしたよね……」


「い、いや……き、気にするな。全然大丈夫だから」


 傍から見ればおかしなやり取りをしているように見えるだろうが、これはガチの反応。

 至って普通に接している()()()だ。

 

(というかなんでこんなに動揺してんだオレ……)


 なんか自分が自分じゃないみたい。


「で、では失礼します……」


 ソフィアは俺の隣に腰をかける。

 だがそこからがある意味、辛い時間の始まりだった。


「……」


「……」


 互いに一言も話さない時間が続く。

 黙り続けてから3分くらいだろうか?


(な、なにか喋らないと……)


 そう思っても口が動かない。

 額からは意味不明な汗が滴り、手の甲にポタッと落ちる。


(ま、マズイな……これじゃあ生き地獄だ)


 向こうも喋ろうにも喋れない様子だった。

 

 そりゃそうだ。


 さっきの俺の行動が今の現状を招いているのだから。

 

 ここは普通に考えて俺から話し始めるのが常識――


「あ、あの……!」「あの……!」


「「……あ」」


 喋りだした途端、向こうも同時に喋り出すという奇跡が起こる。

 同じことを考えていたのか、向こうも俺と同じように何とも言えない反応をする。


「さ、先にどうぞ……」


「い、いやソフィアからでいいぞ」


「い、いえいえランスから先に……」


 と、今度は沈黙タイムから譲り合い合戦にシフト。

 お互いにぎこちない表情を見せながら、どうぞどうぞと譲り合う。


(ホント、なにやってんだろ俺たちは……)


 もう頭の中がぐっちゃになってよく分からない状態に。


(ダメだ。一旦頭の中をリセットしないと……)

 

 そう言い聞かせながら俺は一旦、胸に手を当てると、すぅーっと思いっきり空気を吸い――ゆっくりと吐いた。

 心を少しでも落ち着かせ、もう一回深呼吸すると、再び口を開く。


「な、なぁソフィア」


「は、はい」


「さっきは……すまなかったな。突然逃げるように去ってしまって……」


 少し声がカスカスになっているが、何とか謝罪することができた。

 するとソフィアもいつもの可愛らしい笑顔に少しずつ戻っていき……


「わたしなら大丈夫です。でも、あんなに慌てていきなりどうしたのですか?」


「いや、悪い。それは俺にも分からないんだ」


「分からない……?」


「ん?」と微妙な表情を見せるソフィア。

 

 当然である。


 当の本人が分からないのに他人に分かるわけがない。


 でもこれは事実なのだ。


 自分でも何言ってんだって思うが、ウソはついていない。


 今まで感じたことのない不思議かつ奇妙な感覚だ。


「何かお悩みがあるのですか? もしよければご相談に乗りますよ? わたしでよければの話ですが……」


 優しいソフィアはこんな意味不明なことを言う俺にそう手を差し伸べてくれる。

 本来ならば差し伸べる側の人間にならないといけないはずなのに……


 でもこれはある意味いい機会なのしれない。


 こうして二人きりでゆっくり話す時間って結構ない。

 たまにソフィアも公務で屋敷にいない時があるし。


 というかそもそも二人で話す場すら設けることがない。


 ならば一つだけと、俺はソフィアに聞いてみたいことがあった。


「なぁソフィア。一つだけ質問してもいいか?」


「はい。なんでしょう?」


 これを言えば多分ソフィアは困ってしまうだろう。

 でも知りたいのだ。


 今のソフィアが今の現状にどう感じ、そして自分という存在をどう思っているかを。


 俺は華美な蒼い瞳を向けるソフィアに、聞いてみることにした。


「ソフィアは、俺のことをどう思っているのか……?」と。

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