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41.ソフィアの過去2


「ソフィアに妹が……!?」


 初耳だった。

 でも前に俺はソフィアにこんな質問をしたことがあった。


 ソフィアが第一王女になるのなら、第二、第三の王女がいるのか……と。


(そういう……ことだったのか)


 あの時、ソフィアが見せた悲し気な一面。

 あれは妹であるロゼッタのことを思い出しての表情だったわけだ。


 その時に一瞬だけだったが、国王陛下の顔も一気に険しくなっていた。


 当初は疑問だったが、これでようやく納得できた。


「妹……いや、ロゼット様は今どこに?」


「王城にある自室です。ただ、動くことも話すこともできないので常時使用人が付いておりますが」


「そうですか……」


 ――解離性昏迷


 専属の医師の話によれば、人として生きるための生命機能は動いているものの、精神的苦痛や絶望を感じた時に生じる解離性障害によって重度の昏睡状態に陥ってしまう病気とのこと。


 よくは分からないが、ロゼットの病はそういうものらしい。


「原因は何ですか? 精神の病となると、やっぱり……」


「ランス様のお察しの通りです。ソフィア様だけでなくロゼット様のお母様でもあるルージュ様の死が原因です。ロゼット様はソフィア様以上にルージュ様の死を悲しんでおられました。それも一週間以上も自室に引きこもってしまうほどに……」


「一週間も……」


 そうしてロゼットの心は人と接することを拒絶し、日を重ねていくごとに暗闇の奥底へと沈んでいった。

 それがこの病を招いた原因ではないかと、医師は言ったらしい。


「そんな過去があったなんて……」


 あの時に俺が何気なく言った言葉はソフィアたち家族にとって思い出したくもない出来事だったのだ。

 知らなかったとはいえ、俺の心には罪悪感が芽生えていた。


「方法は……ロゼット様の病気を完治させる方法はないんですか?」


「……はい。未だに完治方法は見つかっていません」


 俺の質問にアリシアさんは力なく頷く。


 場の雰囲気は一気に沈み、俺も返す言葉がなかった。


「ソフィア……」


 眠る彼女を見ると、何故か悲しさがこみあげてくる。

 辛い現実の中を生きてると知ってなお、あの笑顔を思い出すと特にだ。


 そして彼女は辛い現実を糧にして、王女としての責務を果たそうとしている。

 妹であるロゼットの想いも込めて。


「アリシアさん、俺……ようやく自分が今、何をしているのかが分かりました」


「ランス……様?」


 今まで俺はただソフィアに冒険者のことを世界のことをよりよく知ってもらえればそれでいいと思っていた。

 それがソフィアの願いであり、全てだと思い込んでいたからだ。


 でもソフィアの目指す先はもっと奥深いところにあった。


 アリシアさんの話によれば、ソフィアは実の母であるルージュさんがこの世を去り、妹のロゼットが病になってしまった時から世の中のことについて深く考えだしたという。


 これは恐らく自分が何とかしなきゃいけないという使命感が強く出た結果だろう。


 そして今、ソフィアはその第一歩を冒険者となってスタートさせた。

 その中で俺はその指導役という重役を任されることになった。


 ということは俺の教えによってソフィアの今後を左右し得る可能性があるってこと。


 それは恐らく自分が考える以上に責任重大なことだ。


 もしかしたら俺の考えすぎなのかもしれない。


 でも、今回の話を聞いて今自分のしていることがどういうことなのかを見直すきっかけになったのは事実。

 

 今までも別に適当にやっていたわけじゃないが、今後はさらに責任という二文字を強く心に刻む必要があるということが分かった。


 要は俺が今していることはこの国の今後を変えるかもしれないと言っても過言ではないということ。


(もっと責任を持ってやらないと。ソフィアの為にも……妹さんのためにも……)


 俺はギュッと拳を握ると、片方の手をソフィアの手の上に重ねる。

 

 すると……


「……ん、んん……」


 ソフィアの瞼がゆっくりと開き、その奥深く水晶のように綺麗な碧眼が露わになる。


 ソフィアが目を覚ましたのだ。

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