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35.決まりました。


「――わたしは貴方のファンなんですもの」


 彼女から放たれた言葉は思いもよらないことだった。

 何と、俺のファンだというのだ。


「ふぁ、ファンって……本当に言っているのか?」


「嘘じゃないわよ? わたしは帝国で貴男の噂を聞いて一度会ってみたいと思ってたの」


「噂って……帝国にまで広がっているのか?」


「ええ、もちろん。危険指定級の魔物をたった一人で倒した稀代の英雄ってね」


「え、英雄か……」


 どうやら例の一件は既に国境を越えてしまっているらしい。

 それに帝国じゃ俺の真の姿を知らない人が多いためか、かなり誇張表現されていた。


「すごいですよ、ランス! ファンだなんて!」


「すごい……のか?」


「当然です! だって国内だけじゃなく、他国にもランスを実力を認めている人が沢山いるってことなんですから!」


 ほー、なるほどな。

 

 そういう考えはなかった。

 まず今まで他人に評価されることなんてなかったし、それ以前に気にしてもいなかったから。


「あ、そう言えばまだ自己紹介がまだだったわね。わたしはイリア。こう見えても冒険者よ。よろしくね」


 自己紹介を。

 俺とソフィアも軽く自己紹介をする。


「ソフィアです。治癒術師やっています」


「よろしく!」

 

「ランスだ。ていうか、冒険者だったのか?」


「そうよ。ほら」


 イリアと名乗る少女は腰に巻いたショルダーポーチから一枚のカードを取り出し、俺たちに見せてきた。


「本当だ。しかもA級冒険者……」


「ふっふーん♪ これでも帝国ではそれなりに腕の立つ冒険者なんだから!」


 確かに結構な実力者のよう。

 職業は短剣士で総合等級はAランク。


 ステータスを見る限り、敏捷性(アジリティ)俊敏性(クイックネス)と言った行動系のパラメータが高かった。


 短剣使いには最強の武器だ。


 魔法適正もしっかりAあるし……。


「中々のステータスだな」


「でしょ?」


「ああ、普通にすごい」


「えへへ〜英雄さんに褒められちゃった!」


 イリアは嬉しいそうにニコニコする。

 

(本当に俺のファンなんだろうか……)

 

 信じていないわけじゃないが、やはり完全には信じきれない。

 

 ソフィアはすごいって言うけどあまり実感湧かないし――


「あーーーーーーーーーーーーーっ!!」


「ッ!? なんだいきなり……!」


 唐突に大声を出すイリア。

 彼女の視線は王都中央にある時計台に向いていた。


「もうこんな時間なのにまだ宿取ってない!」


「や、宿……?」


 ああ、そうか。

 イリアは帝国から来たんだもんな。


「でもこの時間だと宿は取れないと思うぞ」


「えっ? それマジ?」


「ああ……毎日多方面から色々な人間が集まってくるからな。どこの宿も早めに取らないと」


「そ、そんなぁぁ〜ってことは今日わたし野宿!?」


 無念にその場に崩れるイリア。

 旅する冒険者なら割とあるあるなことではあるが……


「どうしよう……わたし野宿なんてしたことないし、この近くの森って魔物が出るって聞いたし……」


 王都周りにある森林地帯は確かに魔物やモンスターが多く潜んでいる。

 野宿慣れしていない人にとっては少しキツイ環境だろう。


 最近は冬が近いってのもあって寒くなってきているし……。


「はぁ……」


 深く溜息を吐くイリア。

 

 と、その時。


 俺は一つ、ある提案を思いついた。

 

「じゃあ、屋敷(うち)に来るか? まだ部屋もいっぱいあるし、泊まるくらいなら……」


「えっ、いいの!?」


 俯く顔を上げ、キラキラと目を輝かせてくる。

 と、言っても俺だけの判断では良いとまで言えない。


 最終決定権は屋敷の所有者であるソフィアにある。


「ソフィア、彼女を泊まらせてあげてもいいか?」


 独断専行で決めることはできないので、ソフィアに許可を取る。

 

 と、ソフィアは何も反論することなく頷いてくれた。


「もちろんですよ。今、わたしも同じこと考えていましたし……」


 どうやら問題はないみたい。

 

 イリアはそれを聞くと、


「あ、ありがとう! 本当にありがとう!」


 何度も頭を下げてお礼を言ってくる。

 これで彼女の野宿は回避されたわけだ。


 こんな冷える時期に外で寝泊まりなんて可愛そうだもんな。


「んじゃ、そうと決まれば早く帰ろう。遅くなるとアリシアさんが心配するし」


「ですね。少し寒くもなってきましたし」


「ってことだから、ついてきてくれイリア。これから屋敷まで案内するからさ」


「よ、よろしくお願いします……!」


 と、イリアのお泊まりが決まったところで。

 俺たちは街頭輝く夜の王都を歩いて、屋敷へと戻るのであった。

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