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34.影の正体


「ら、ランス! 一体どこに向かっているのですか!?」


「ちょっと人気のないところにね」


「人気のないところって、なぜ……」


「俺たち、ちょっと追われているみたいなんだ」


「追われてる? ストーキングされているってことですか?」


「そういうこと。だから誘き出してみようって思ってね」


 ソフィアの手を引っ張りながら街中を駆ける。

 俺はその謎の追手を誘き寄せるため、とある場所まで誘導していた。


「誘き寄せると言っても、その追手はついてきているのでしょうか?」


「大丈夫、ついてきているよ」


「分かるんですか?」


「まぁね」


 探知魔法にはバリバリ引っかかっている。

 というか俺たちが走り出したからか、向こう側も走って追ってきている。


 最も、俺たちからは姿を見せないように上手くやっているみたいだが。


(一体、目的はなんだ?)


 一つ考えられるとすればソフィアの存在だ。

 こうして当たり前のように一緒にいるが、彼女はこの国の王女。


 当然、色々な人間に目はつけられている。


 その中にはソフィアのことをよく思わない者もいるはずだ。

 

 例えば、貴族間の派閥争いとか。


 前に王権派と貴族連合の間で揉めてるって話を聞いたし。


(まぁ、ぶっちゃけ政治とか興味ナッシングなんでそこのところはよく分かっていないけど……)


 だが俺たちが追われる理由を考えられるとすれば、ソフィア目的が一番濃厚だろう。


 もしかしたらソフィアの命を狙う暗殺者かもしれない。


 どっちにせよ、ソフィアの身だけは何としても守らないといけない。


「こっちだ、ソフィア」


「は、はい!」


 街角を巧みに使い、相手を翻弄しつつも、少しずつ誘導していく。

 

 そして辿り着いた先は――


「こ、ここは……都内公園?」


「そう。この時間なら人は誰もいないからね」


 向かった先は王都の最南端にある都内公園。

 時間的に人気は一切なく、街灯も一つしかない薄暗い場所だ。

 

(ここなら相手も出やすいだろう)


 そう思い、中央にたった一つ聳え立つ街頭に歩み寄る。

 

 その時。


「はぁ……はぁ……はぁ…」


 ……お、来たな。


 俺たちの背後から現れる黒い影。

 その影は少しふらふらとしながら、俺たちの元へと歩み寄ってきた。


「何者だ。なぜ俺たちを追う?」


 俺はその謎の影に理由を問う……が、


「なん……で……」


「ん……?」


 ふらつく影は震えた声で言葉を発する。

 なんか息切れもしている感じだ。


 そのせいか言葉が途切れ途切れになり、まともに聞こえなかった。


「お、おいお前――」


 少し心配になり、その影に寄ろうとした――その時だった。


「なんで……」


「え?」


「なんで逃げるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ええっ!?」


 突然の大声で俺もソフィアも超びっくり。

 そして同時に街頭の光でその影の正体が露わになる。


「お、女の子……?」


「お、お前なのか? 俺たちを追っていたのは……」


「そうですよ! 声をかけようと思ったら二人とも逃げるんだもん。追いかけるのに大変だったわ」


 街頭の光に照らされ、露わになったのは赤色のロングヘアに碧色の瞳を持った美少女。

 

 年齢は多分俺と同じか少し下か。


 彼女もソフィアと同等くらいに美形で、雰囲気的には貴族令嬢って感じだった。


「まぁ……確かに最初は尾行しようと思ってたんだけど……」


「えっ?」


「ああ、いや! 何でもない何でもない! 最初は尾行しようと思っていたなんてこれっぽっちも思ってないから!」


「そ、そうか……」


 バリバリ本音が出てしまっているのだが……。

 でもどうやら見た感じ、暗殺者とかではなさそう。


 いや、もしかしたらこう見えても暗殺者の可能性はあるか。


 警戒は怠らず……だな。


「それよりも、俺たちに一体何の用だ? ちなみにセールスならお断りだぞ」


「セールス? 何ですかそれ? わたしはただ、貴方に会いにきただけなのですが」


「貴方……?」


 少女の目線はソフィア……ではなく、俺の方に向いている。

 

 ってことは……


「目的は……オレなのか?」


 そう聞くと少女は「うんうん」と頷き、


「そのとーり! わたしはランス様にお会いしに遠路遥々帝国から来たのです!」


「な、なぜ俺に……」


「え、だって……」


 少女はここで一旦間をあけると、再び口を開いた。


「わたしは貴方のファンなんですもの」


「…………………………え?」


 この少女の一言を聞いた途端、俺は一瞬だけ、思考停止に陥ったのだった。

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