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28.なんか秘密があるようです。


「こ、ここここ婚約って……お、お父様!?」


「ど、どどどういうことで!?」


「言葉通りの意味だが、何か問題でもあるのか?」


「ありありですよ!」「問題ありますよっ!」


 息の合う俺たち二人。

 でもこれは流石に驚きを隠せなかった。


 だっていきなり婚約はどうかって……まだ出会ってから数日だぞ?


「ふむ……息がぴったりなところを見ると問題ないように思えるが……」


「いえ、陛下。そういう問題では……」


 息が合うだけで王族と結婚だなんてそんなアホな話はない。

 でも陛下の顔を見る限り、結構本気(マジ)で言っているようで……


「娘では不服か? ランス殿」


「ふ、不服とかではないんです。ただ……」


「お父様! これ以上、ランスを困らせるのはおやめください! それに、わたしたちはまだ会って間もないです。いきなり婚約だなんて話が早すぎますよ!」


 ソフィアが俺に助け舟を出してくれて何とかその場は回避。

 ソフィア自身もこれには少し否定的……というか俺のために反論してくれているようにも思えた。


「だ、だがソフィアよ。お前もそろそろ将来を誓った相手を見つけねばならぬのだぞ? というか、むしろ王族では行き遅れの域だ。数か月前からお見合いの話が何件も来ているが、なぜ受けぬのだ?」


「そ、それは……」


 少し雰囲気が気まずくなっていく。

 

(そうか、陛下はソフィアの将来を心配していたから……)


 王国の婚姻適齢年齢は女性は16歳以上、男性18歳以上と定められている。

 中でも王族、貴族は許嫁契約による結婚が主体となるため、結婚の有無自体は適齢期よりも前に決まっていることが多い。


 しかし話を聞く限りだとソフィアの場合、まだ相手すら決まっていないという状況。

 確かに王族側から見れば焦るのも無理はない。


 その上、国内では最も影響力のある家系だ。

 

 陛下が結婚を早めたいと思うのも無理はない。 


「今まで婚約についてはお前の自由にさせてやりたいと思ってあえて言にしなかった。だが、そろそろ考えなければいけない時期だ。エスメラルダもそれを望んでいるはずだ」


「わ、分かっています……」


 今まで結婚を強要しなかったのはソフィアを愛するが故の行為なのだろう。


 たまに貴族では自分の娘に結婚を強要して望まない婚姻を無理矢理させるってのが多いらしいからな。

 

 それも目的は地位や権力の獲得や維持のためという。

 

 平民の俺からすれば関係のないことだがホント、汚い世界だと思う。

 その点、ソフィアは良い親御さんに恵まれたと言えよう。


 でも、それとこれとは話はまた別。

 俺は別にソフィアの婚約者になりたくないわけではない。


 ただ……敷居が高すぎるのだ。

 だってオレ、何の掴みどころもないただの平民だぞ?


 もし自分が貴族家の人間ならまだしも、平民が王族と結婚だなんて実現すれば一大ニュースになる。

 同時に貴族を差し置いての行為になるから反感も多いだろうし、実際ソフィアを狙っている貴族家はかなり多くいるはずだ。


 お見合いの話は何件も来ているってさっき陛下も言っていたし。


「でもまぁ、強要はあまりしたくはない。だがせめて来年の貴族総会までには相手を決めてほしいと思っている」


「貴族総会……?」


「四年に一度、国中の貴族家の主が一同に集まってパーティーを開くんです。政治・外交・貿易の話はもちろん、婚約者同士の交流の場でもあったりします。そして、何より一番大事なのは次期国王の座の開示です」


「国王の座? 次期国王の椅子を誰が座るかってことか?」


「そうです。このまま行けば第一王女であるわたしが次期国王の椅子に座ることになります」


「ん、ちょっと待って。そう言えばソフィアは()()()()なんだよな?」


「はい。それが……?」


「ということは第二、第三の王女がいるってだよな?」


 今まで触れてこなかったソフィアの家庭内事情。

 いや、あえて触れなかったというべきか。


 他人の家内事情を、しかも王族のなんてそう易々と聞けないからな。


 でも俺的にはずっと気になっていた。


 王城でも宴会の時にもソフィア以外に王女の姿はなかったし……


 だがソフィアはそれを聞くと、俯いてしまった。


「そ、それは……」


「……?」


 その時だ。

 横からフェルト国王陛下が会話に割って入ってきた。


「ランス殿。すまないが、その話はあまりしないでほしい。確かにソフィアの他にも跡取りとなり得る人物はいる。だが、我々王族以外にはこの事実は知らされていない。実質、ソフィアのみがこの国の王女なのだ」


「そ、そうだったんですか。すみません、出過ぎた真似を……」


 何か事情がありそう……というか絶対にあるって感じだ。

 あえてその先は聞かなかったが、民にも隠すほどのこと。


 よほど深刻な話なのか、あるいは……


「ソフィアもごめん。余計なこと言っちゃって……」


「い、いえ! ランスは何も悪くないです! 元はと言えば優柔不断なわたしが悪いのですから」


 でも王族も大変だな。

 平民と比べて忙しい上に決めることはスパッと決めないといけない。

 

 特に結婚とかとなるとこの先一生付き合っていく相手になるのに考える瞬間はたった数日かそこら。


 猶予がないってのは本当に辛いことだと思う。


 俺だったらストレスでハゲ散らかしてしまうね。


「……おっと、もうこんな時間か。すまない、二人とも。これからちょっと帝国で会議があってな。そろそろ行かねばならない」


「例の講和条約についての会議ですか?」


「ああ、明日の夜までには帰城するつもりだ。しばらく城を留守にするから何かあればセブルスに伝えてほしい」


「分かりました。お気をつけて」


「うむ。ではランス殿、引き続き娘のことを頼む」


「は、はい! お任せください!」


「邪魔したな。では、行くぞ」


「「はっ!」」


 フォルト国王はゆっくりと立ち上がると、騎士数名を引き連れて帝国へと旅立っていた。

 

「はぁ……一時はどうなるかと思った」


「ごめんなさい。お父様が無茶なご相談を」


「いや、大丈夫。ちょっと驚いただけだ」


 本当に驚きでどうなるかと思った。

 心臓に悪いぜ、全く……


「あ、あの……ランス?」


「ん、どうした?」


 顔を赤らめもぞもぞとするソフィア。

 何か言いたげな感じのように見えるが……。


「そ、その……さっきの話ですが……」


「さっきの話?」


「は、はい。もしランスさえ良ければ、その……わたしの……」


「わたしの……?」


 言葉を綴っていく度に顔を赤くするソフィア。

 そして次に何かを言う時には風邪でも引いたかってほどに真っ赤に染まり――


「や、やっぱり何でもないです! ごめんなさい!」


「あっ! ソフィア!」


 タタタッと逃げるように屋敷に入っていってしまった。


「ど、どうしたんだ?」

 

 なんかしたっけかな……と思うが心当たりはない。

 それよりも、色々あって疲れた。


 心身ともに。


「とりあえず、今日は部屋でゆっくりしよう……」


 俺はそう呟くと、再び屋敷へと戻ったのだった。

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