25.真実を聞きました。
「一昨日ぶりですね、ランスくん」
「ご無沙汰してます。ドロイドさん」
部屋にいたのはギルドマスターのドロイド・レインボルグ。
かつてはSランク冒険者としてその名を馳せ、ギルドが誇る最強の冒険者として君臨していた人……
……らしい。
正直、その辺はよく分からないが、アルバートさんの話によればとにかく昔は凄かったとのこと。
で、冒険者を引退した後、前ギルドマスターにその腕を認められ、次期ギルドマスターの地位に。
今では大陸全土の冒険者を纏め上げるギルドの経営者ってわけだ。
「いきなり呼び出してしまってすみません。少しランスくんとお話したいことがありまして」
「いえいえ、ギルドマスターのお呼びとあればすぐさま駆けつけるのが冒険者ですから」
実際、こんなすんごい部屋に招かれたわけだし。
多分、この部屋に入ること自体もうないだろう。
ある意味、記念になった。
「そう言っていただけると、嬉しいです。どうぞ、お好きな場所に腰をかけてください」
流石はギルドの最高権力者。
見るからに高級そうなソファが円を描くように置いてある。
多分革製のオーダーメイドソファだろう。
座った瞬間にお尻が包み込まれるほど柔らかい素材で出来ていた。
「それで、お話とは一体……?」
ドロイドさんも向かいのソファに腰をかけると、口を開いた。
「実は昨日、きみの等級についてギルド関係者たちと議論になりましてね。実力に沿っていない等級に置くのは問題なのではないかという議題が出たのです」
「G級であることにですか?」
「はい。それに私はその中でも貴方の真の実力を知った身。いずれはどうにかしないといけないと思ってどうすべきかをあれからずっと考えていました」
「そ、そうだったんですか……」
そこまで考えてくれていたとは……。
でも逆にそこまで考えるほどなのかと思ってしまう。
周りの人は皆、俺のことを異端扱いするけど……
「それに毎年査定の時期に起こる不可解な謎もようやく解けましたし」
「不可解な謎?」
「査定用の魔道具の不良です。ここ3年間で毎年起こってたんですよ」
ああ、そういえば前にそんなことを話していた冒険者がいたっけな。
毎年査定道具をぶっ壊す輩がいるって。
正直「へぇ~」って感じで聞き流していたけど、話の流れ的に……
「あの……まさかその謎を引き起こした犯人って……」
「きみです。ランス・ベルグランドくん」
「ま、マジですか……? それ……」
「はい。実は……」
ドロイドさんは事細かに詳細を話してくれた。
謎の不良は全て俺が査定した直後に起こっていたということ。
そして全てが魔力過多によるものであること。
前に見せた俺の魔法と俺の冒険者歴過去3年間のデータを照合して、確信へと至ったらしい。
そしてもう一つ、俺はとんでもない真実を耳にすることになる。
それが……
「ランスくん、きみは何故魔法査定での判定でGが出るか、考えたことはありますか?」
「それはもちろん……」
考えまくっていた。
だからこそ、俺は一年間死に物狂いで魔法を鍛えたんだ。
G級から脱却し、まともな生活をできるようにするために。
でも俺は目的を果たせなかった。
俺はその時点で考えるのを止めた。
数値が全て。
結果が全て。
そう思っていたから、疑いもしていなかった。
もちろん、納得は行かなかったけど。
「俺は今まで謎に思っていました。何故自分が、自分だけがG判定になるのか。病の影響で生まれつき魔力が少ない魔力過小者ならともかく、俺は健常者です。普通ならG判定にはならない……そう思っていました」
「そうです。普通ならGの判定が出ることはまずあり得ません。歴代でも特殊な病を持った人を除けば貴方が初めてなのですから」
「じゃ、じゃあなぜ俺は……!」
思わず身を乗り出して叫んでしまう。
俺はマズイと思い、すぐに身を引いた。
「す、すみません。つい……」
「いえ、お気になさらず。元はと言えば我々ギルドの責任でもあるのですから」
「ギルドの……? それってどういう……」
眉を寄せ、ドロイドさんを問う。
するとドロイドさんの表情はキリッとした真剣なものに変わり……
「ランスくん、これだけは言っておきます。きみの実力は決してG級レベルではない。むしろSランクを超越するほどの実力をお持ちだと。だがそんなきみがなぜGという判定になったのか……」
ドロイドさんはここで一旦止めると、さらに顔を険しくさせ――こう言い放った。
「それは貴方が……他者にはない特別な力を持った測定不能だからです」




