166.苦痛にまみれ
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「くぅっ……!」
壁に叩きつけられるイリア。
瞬間に大男からの大声が後から飛んでくる。
「おいイリア。我々の目的はなんだ?」
「閣下の悲願を……復讐を遂げるために身を捧げることです」
「それで、貴様は一体何をした?」
「それは……」
圧をかけていくヴェルムに防戦のイリア。
それは全て分かって上での質問だった。
「陛下から受けた命令を忘れたか?」
「い、いえ……そのようなことは」
「ではなぜあのようなことをした?」
「あ、あのような……とは!?」
「とぼけるな! 貴様が王女たちを逃がしたのだろう!?」
「一体何のことだか……」
「貴様……! ふざけるなッ!」
「くぅっ……!」
勢いを乗せた一発が彼女の頬を抉る。
ヴェルムの憤りは更に増していく。
「我々の監視状況は完璧だった! 事前情報じゃ黒髪の少年がそこそこの手練れらしいが、あの状況を覆すことは不可能だったはずだ。だが、奴らは逃げ出すことが出来た……つまりだ、内部に逃がした輩がいるというのは明白なこと。そして最もその行為を行った可能性が高いのは、奴らとのお友達ごっこをしていたお前しかいないということだ」
「しょ、証拠はあるんですか?」
「緊急脱出用の排水路から奴らの痕跡と思わしきものが見つかった。あそこを知るのは我が帝国側でも任務開始前から先行で現場についている我々だけだ。これだけでも十分な証拠になる」
「でも私がやったという証拠には……」
「黙れッ! 貴様、自分の身分を弁えているのだろうな? 陛下に少しだけ寵愛を受けたからって調子に乗るのもいい加減にしやがれ!」
「ふっ、あんなの……寵愛でもなんでも……うっ!」
吐き捨てるように放った言葉と同時にまたもヴェルムからの一発がイリアに襲い掛かる。
「閣下が愚弄するか、この外道が!」
外道はどっちだ……そんな言葉がイリアの頭に駆け巡る。
でもその言葉は自分にも適用されることだ。
言いたくても自分にそんなことを言える権利はない。
気持ちを抑えながらもイリアは口を閉じた。
「ふぅ……私としたことがつい熱くなってしまった。まぁいい。貴様の処遇は任務の終わりと同時に果たされるからな」
ヴェルムも少し取り乱したと思ったのか、少しずつ憤りが収まっていく。
しかしゴミでも見るような目つきは相変わらずだった。
昔からそうだった。
聖十字魔法師団に入団した時から。
「イリア、貴様の任務は分かっているな?」
「……はい」
イリアが力なく頷くと、ヴェルムは作戦資料らしき書類を地面に叩きつけた。
「開戦前までにこれをよく読んでおけ。どうせ貴様の余命はそう長くはない。閣下のために身を粉にして働くんだな」
ヴェルムはそういうとスタスタと去っていった。
同時に拘束具も外れると、イリアは地面にまき散らされた資料をかき集め、目を通した。
「こ、これは……!」
資料を読むとそこには想像を絶する内容が書かれていた。
それはイリア自身も知らされていなかった帝国の真の作戦内容だった。