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162.命運

遅くなりましたが、総合評価10,000PTありがとうございます!

これからも完結まで投稿してまいりますので、何卒応援のほどよろしくお願い申し上げます。




「特権って……まさかお父様」


「……すまん、ソフィア」


 一拍の沈黙の後、陛下は娘に対して深く頭を下げた。

 ソフィアは即座に否定する。


「だ、ダメです! お父様が犠牲になるなんて……!」


「この国を守るにはこの方法以外にない」


 そうか、陛下は国を差し出すのではなく、自らと自らの持つ権力を差し出すことによって国を守ろうとしているのか。


 でもそれじゃあ……


「絶対にダメです! それに、お父様が奴らにこの国の特権を明け渡せば、それは実質国そのものを帝国に渡すに等しい行為なのですよ!」


「だが、お前たちと民は守ることは出来る。私がそうさせるように契約を交わさせるのだ」


「そんなこと……あの吾人が受け入れるわけが……」


「奴が一番欲しているのはこの私のクビなのだ。奴にとって最も重要なのは復讐を果たすこと。その復讐の矛先の終着点に私の存在がある。それにあの男は出来ることなら、この国を完全に滅ぼそうとはしないはずだ」


「ど、どういうことですか?」


「奴らが最も課題しているのは帝国の国家再建だ。その為には莫大な資金と再建に伴う器が必要だ」


「その器として王国の力を……?」


「そうだ。我が国の力を帝国側が手中収めたとあれば、大陸各国に大きな影響力を示せると共に国も再建することが出来る。その為にも奴らからすればあまりこの国を傷物にはしたくないはずだ」


 つまり、利害の一致を相手に伝えることが出来ればこの国が亡ぶことはないと。

 帝国側のボスは陛下を殺すことで復讐心を満たすことができ、王国側は国を守ることが出来る。


 でもこの場合の守るというのは、帝国の手中に収まったということでの話。

 この先、王国側の人間は帝国に顎で使われることになるだろう。

 

 それこそ、まるで奴隷かのように帝国側の人間に好き勝手させられる。

 政治に無関心の俺でもこんな未来が想像出来てしまうんだ。


 これで国を守ったと言えるのだろうか?


 いや、そんなはずはない。

 そうなってしまったら、この国の未来は……


「それはダメだ……」


「ら、ランス……?」


 不意に出た一言だった。

 意図的ではない、本心からつい出てしまった。


「ランスくん、ダメというのはどういうことだ?」


「陛下、失礼の上の申し上げますが、それでは国を守った……とは言えないと思います」


「なに?」


「陛下の決断は苦渋の考えのもとであるのは、こんな俺でも分かります。でももし陛下の犠牲の上でこの国が存続出来たとしても残された臣下や民たちはどうするのですか?」


「……っ!?」


「仮に存続出来たとしても待っているのは暗い未来です。復讐の為とはいえ、あんな生物兵器まで導入してくる人たちが王国側の人間に適切な対応をするとは思えません」


「それは……」


 別に俺は文句を言いたいわけではない。

 陛下の決断は勇敢で、誰にでもできることじゃない。


 むしろ国のことを誰よりも考えた上での決断だ。


 でもそれじゃあ悲しむ人がいるんだ。

 もう一人、国のことを……民のことを誰よりも考えている人が。


「それに、陛下が犠牲になったらソフィアが悲しみます!」


「ら、ランス……」


「だから俺は絶対に陛下だけを犠牲にはさせない。意地でも他の方法を見つけます!」


 他の方法……そんなものがあれば苦労はしない。

 でも本能的に今のままじゃダメだと思ったんだ。


 勢いだけなのは分かっている。

 でも……それよりも、俺はソフィアの悲しんだ顔だけはもう見たくないんだ。


「陛下」


「な、なんだね?」


 俺は陛下の前で膝をたて、深くを頭を下げると。


「この一件、自分に任せてはくれませんか? ……俺が何とかしてみせます」

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