159.デジャヴ
「な、なんだこれ……」
「これは……」
水路から地上に出た俺たちは、ギルドに向かっていた。
そこで俺たちは大通りに布陣を取る王国兵の一行を目にしていた。
「あれって、王国の騎士なのか?」
「ええ。しかもかなりの重装備です」
「王国も臨戦態勢を整えてきたってわけか」
詳しい状況は分からない。
だが、もう引き返せないところまで来ているのだろう。
戦争は確実に起こる。
これはどうやら決定事項のようだ。
「早くギルドに向かいましょう。今は状況がどうなっているか知りたいです」
「ああ、そうだな」
俺たちは足早にギルドに向かう。
下手な混乱を招かないようにできる限り、王国兵には見つからないように動いた。
そして、なんとかギルドまでたどり着いた。
「閉鎖……」
「ま、そうだよな」
ギルドは完全に閉鎖されていた。
ギルド前には数人の護衛兵が身構えており、近づこうにも近づけない。
「どうする、ソフィア?」
「わたしが行きます。前回のように理由をしっかりといえば通してくれるはずです」
確かに前はそれで通ることは出来た。
まぁあの時は通してくれたというよりかは王女権限での強行突破みたいな感じだったけど。
「なら俺も行こう。万が一ってこともあるしな」
「ありがとうございます、ランス」
「では私は周囲の警戒をしておきます」
「お願いします、アリシアさん」
というわけで。
俺とソフィアは物陰から出ると、ギルドの前にゆっくりと近づく。
向こうも俺たちを視認したようで、声を張り上げてきた。
「何者だ! お前ら!」
「わたしです」
そう言いながら、ソフィアはフードを取った。
その顔を見た途端、兵たちの表情が変わる。
「あ、貴女は……」
「そ、ソフィア様! ご無事でいらしたのですね!」
兵の一人が声を荒げる。
その必死さから彼女の失踪はもう広まっているみたいだった。
まぁ当然と言えば当然だが。
「ソフィア様、今王国は……」
「分かっています。なのでここを通してもらえませんか?」
「ぎ、ギルドに何かご用が?」
「はい。わたしはドロイドギルドマスターに話をするためにここへ来ました。生憎急ぎなので面会状はありませんが、許可を願えませんか?」
丁寧な言い回しを許可をお願いするソフィア。
雰囲気的にはいけそう……そう思ったが。
「も、申し訳ありませんソフィア様。現在、ドロイド様は会議中でして誰であってもここを通すなと命じられているのです」
「それがたとえ王族であっても……ですか?」
「……はい。申し訳ございません」
力なく頷く兵士。
言われたことを忠実に守っているので、彼が悪いわけじゃない。
でも……
「なら、言い方を変えましょう」
「は、はい?」
ソフィアの表情と声色が変わる。
それは以前にもあったやり取り。
これは前回と同じように……
「グリーズ王国第一王女の名において命じます。ここを通しなさい。これはお願いではありません、命令と受け取ってください」
前と同様に兵たちに権力という名の圧力をかけていく。
流石の兵たちもその言葉に動揺し始めていた。
「で、ですがソフィア殿下。現在ギルドは閉鎖中でして、我々はギルドマスターのご命令には逆らうことはできないのです」
それでも兵士は退かない。
命令を徹底されているのだろう。
正直、その忠誠心は流石としか言いようがない。
「どうしても……無理なのですか?」
「も、申し訳ございません!」
勢いのある謝罪だ。
これはどうも難しいらしい。
前回のように強行突破は無理そうだな。
「……今回はそうはいきませんか」
小声でボソッと呟くソフィア。
すると。
「で、殿下!?」
背後から聞いたことのある声が聞こえてくる。
ゴッツイ身体にゴッツイ鎧を身に纏った巨漢。
その巨漢はヘルムを取ると、見覚えのある顔が目に入ってきた。
「あ、アルバートさん!?」




