155.誓い
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イリアたちが去った後、俺たちはアジトから抜け出すんべく試行錯誤を繰り返していた。
「ダメか……」
「やはり魔法は使えないようですね」
色々試してはみたが、どれも不発。
恐らくこの建物のどこかに、例のバケモノがいた空間と似たような魔法阻害の能力を持つ特殊な結界が張られているのだろう。
魔法を使おうとしても即座に遮断されてしまう。
「せめて手足の拘束具さえ取れればな……」
ご丁寧なことに、この拘束具も魔道具なようで魔法を施した人間でないと解除できない仕組みになっていた。
是が非でも俺たちを逃がさない気でいるらしい。
「とりあえず今はやれるだけのことをしましょう。こういう時こそ冷静に、ですよ」
「やけに落ちついているな。状況が状況なのに……」
正直、俺よりも彼女の方が気が気でないはずなのに何故だか余裕を感じる。
その落ち着きようはある意味、異常だ。
「わたしだって本音を言えば、今はこの国を守るために王女としてどうするべきかを考えるのに精一杯です。それにイリアさんのこともあって頭の中はぐちゃぐちゃです。でも……」
ソフィアはここで止めると、再び喋り始めた。
「こういう時こそ、冷静にならないといけないんです。わたしは王女……人の上に立ち、人々を導いていかないといけないですから。そんな人間が焦って判断力を欠いてしまっては、それこそ取り返しのつかない混乱を招くことになります。〝絶対絶命の時こそ、平静を保て〟お父様から教えていただいたことです」
「絶対絶命の時こそ、平静を保て……いい言葉だな」
「ふふっ、わたしもそう思います」
普通は窮地に陥れば冷静な判断はできなくなる。
それが人間という生き物だ。
だがそこで一度立ち止まって考えることで、窮地から逆転への道を切り開くことが出来る。
たとえどれだけ成功率が低い事柄だとしても。
「やっぱソフィアは凄いな」
「そ、そうでしょうか?」
「ああ。王女様としてこれほど相応しい人間はいないと思う。少なくとも俺はそう思ってるよ」
「そ、そんなことは……っ」
ソフィアは俺から少し目線を反らすと照れくさそうに頬を染めた。
毎度のことだが、それを何度も感じさせるのは決して簡単なことではない。
そしてその考えは口だけでなく、きちんと行動にも表れている。
現にさっきの一言が、今の俺に安心感をもたらしていた。
俺はソフィアの近くで何度もそういうところを見てきたからこそ、余計に彼女に対して尊敬の念を感じてるのかもしれない。
「ソフィア」
「は、はい?」
「絶対に守ろう。この国を……みんなを! そしてみんなで無事に家に帰るんだ。もちろんイリアも一緒にな」
「ランス……はいっ、もちろんですっ!」
今一度自分たちがすべきこと。
そして自分たちが望むことを確認すると、俺たちは誓い合った。
必ずこの国を守って、みんなで無事に家へ帰る。
誰一人として欠けてはならないと。
もちろんイリアも――
「わたしが、どうかしたって?」
「……い、イリア!?」「イリアさん!?」
誓い合う最中。
いつの間にか牢獄の外には黒いローブを身にまとったイリアの姿があった。




