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153.王女の決断


「お喋りが過ぎるぞ、フラム」


 ゲートから現れた大男に続いて。

 その後ろから同じ軍服を着た者たちが続々と中から出てきた。


「ヴェルム殿、申し訳ございません」


 イリアはそういうと、ささっと後ろの方に身を引いた。


「こいつか。例の黒髪の魔術師というのは」


「はい。先のドラゴンの一件も彼が討伐しました」


「ほう。こんなガキが……」


 大男は見下すような目で俺を見てくる。

 その眼はまさに言葉通り、「ガキの分際で」と言わんばかりの眼差しだった。


「お前が今回の一件の責任者だな」


「……」


 俺が口を開くと大男は黙った。

 お前に話す筋合いはないってことか。


「フラム、隣にいる娘は?」


「グリーズ王国第一王女、ソフィア=フォン・グリーズ様であらせられます。現在は城を離れ、彼と共に王家保有の別荘で暮らしております」


「このガキは貴族家の息子か何かなのか?」


「いえ、情報ではそのようなものは」


「ただの一般人と王家の娘が同棲とは……ま、それも本人たちから聞きだせばいいことだ。とりあえずこいつらを連れていくぞ。ここでは分が悪い」


「はい」


 ヴェルムと呼ばれる大男は後ろの部下たちに首で指示を出すと、俺たちを包囲する。

 俺はすぐにソフィアの手を握り、彼女を自分の身に引き寄せた。


「ら、ランス!?」


「俺から離れるな。お前には絶対に手出しはさせない」


 動揺するソフィアに俺はそう言うと、ヴェルムがこっちを向いた。


「抵抗しない方がいいぞ、小僧。悪いが、俺たちはどちらか片方も見逃すつもりはない。彼女だけは見逃してくれだなんてのは通じないぞ」


「ソフィアを見逃さないと、俺が暴れると言ってもか?」


「ふん、お前はバカなのか? ここをどこだと思っている?」


「そ、そうですランス! ここは都市公園と言っても王都の街中です。ギルドの認可なしで、魔法なんて放ったら……」


「分かってる。でもこれは正当防衛だ。ドロイドさんなら話せば分かってくれるさ」


 街中で魔法を放つのは、ギルドはイレギュラーだと認識し、認可が下りない限り、法で禁じられている。

 その上、街中に被害を出せば俺はもれなく二十苦の罪人としてのキャリアがスタートすることになる。


 だが、これはソフィアを守るためだ。

 

 たとえ俺がどうなろうと、彼女さえ守れればそれでいい。


 それが俺の役目であり、彼女と共に道を歩む決意をした俺の使命でもあるから。


「ソフィア、俺が奴らに魔法で牽制するからその内に逃げろ。今の状況的に近くには国家騎士たちが見回りをしているはずだ」


 奴らが分が悪いと言ったのは、この王都と言うフィールド上では自分たちの行動は不利に働くからだ。

 奴らとて、本腰の計画の前に面倒事は起こしたくはないはず。


「だからソフィア、お前は……お前だけは!」


「ダメです」


「え?」


「わたしには貴方を置いて、そんな情けない真似は出来ません」


「そ、ソフィア……?」


 腕に身を寄せるソフィアはキリッとした目で俺を見つめていた。

 

「で、でもソフィア! お前の身に何かあったら……!」


「それでもです。それにここで戦闘を始めてしまえば、彼らの思う壺です」


「……え?」


 ソフィアの硬い声色でそういうと、ヴェルムはふっと笑みを浮かべた。


「流石は一国の王女様。こんな状況でも冷静な判断なことで。貴方の言う通り、彼がここで戦闘を始めて我々の誰かにでも傷をつけてしまえば、先に手を出したのはそちら側、ということになる。そうなれば、我々も相応の報復をせねばならない。王女として自分たちの愚かな行動が最悪の事態へのトリガーになるのは本望ではないだろう」


「くっ……」


 そういうことか。

 やけに向こうの出方が冷静だと思ったら、そういう意図があったわけか。


 奴らに何かをすればその分の見返りが来る。


 こいつらが王都全体に根城を張っているのだとしたら、どこで何が起こるか分からないってことだ。


「ランス、ここは大人しく捕まりましょう」


「ソフィア……」


 もう一度ソフィアの顔を見つめると、彼女は真剣な顔つきになっていた。

 これが王女として、最善の選択だというのなら俺もそれは尊重しないといけない。


 守る以前に、ソフィアの願いを叶えるのも俺の使命なのだから。


 それに、まだ終わったわけじゃないんだ。


 解決の糸口はきっと見つかる。


「……分かった。ソフィアの言う通りにするよ」


 俺がそういうとソフィアはニコリを笑みを浮かべた。

 

「心は決まったか? なら、大人しくついてこい」


 ヴェルムがそういうと。

 俺たちは手首を手錠のようなもので拘束され、連行されるのだった。

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