152.波乱の影で
一方で。
ランスたちが屋敷に帰っている頃、ギルドでは対帝国へ向け、着々と準備を整えていた。
「ドロイドギルドマスター、例のアジトの件ですが、3カ所ほど割り出すことが出来ました」
「それは確かな情報なのですか?」
「王国直属の密偵団からの情報なので、確かかと。調べによれば現地に十数人ほど、帝国関係の人間が出入りしていたそうです」
「なるほど、ご報告ありがとうございます。それで、その対処については?」
「もう既に突撃隊の騎士数十名と封印魔法を使える術師数人を現地に派遣してあります」
「分かりました。では引き続き、アジトの捜索をお願いします。まだ後、半分以上も残っているのですから」
「はっ、急ぎ捜索を進めてまいります。今しばらくお待ちを……」
深々と一礼すると、報告に来た男はマスタールームから去っていった。
国が危機に危ぶまれている中、ドロイドはまだ綺麗な街並みのある王都を眺めながら、一人呟く。
「何としても我々はこの景色を守らねばなりません。国の為、民の為、そして……今回の件で命をかけて戦っている全ての人の為に……」
拳を握りしめ、そう強く誓うと、再びノックの音が部屋中に響いた。
「入ってください」
ドロイドがそういうと、今度は城から派遣されてきた国家騎士が部屋の中に入ってきた。
しかし様子がおかしい。
騎士は妙に息をきらし、部屋に入った後、すぐに言葉は発さなかった。
その姿を見るに、かなり急ぎの要件でこの場に来たと伺える。
ドロイドはあえて何も言わず、騎士が息を整え、落ち着くのを待った。
「ど、ドロイドギルドマスター、き、緊急事態です」
ようやく言葉が出てくるが、まだ途切れ途切れだった。
「落ち着いてからで大丈夫ですよ。これでも飲んで、少し息を整えてください」
ドロイドはテーブルに置いてあった鉄製のピッチャーを手に取ると、グラスに水を入れ、騎士に手渡した。
騎士はグラスを受け取ると、兜を外し、一気に水を喉の奥へと流し込んだ。
「も、申し訳ありません。お見苦しい所を……」
「大丈夫ですよ。それで、何かあったのですか?」
「は、はい! たった今、偵察団から一報がありました。王都から北側に約30キロ、帝国軍と思われし軍勢が五千。更に南側から20キロ圏内に五千、更に北西部より五千の兵が進軍しているのを確認致しました」
「もうそこまで来ましたか。まるで王都を挟み込むような進軍ですね」
帝国からの大隊が王都に向けて出発しているのは予め、知っていた。
その準備も整えつつある。
だが、緊急事態ということは……
「他に新たな情報が入ったのですね?」
ドロイドがそういうと、騎士はコクリと頷く。
そして再び口を開くと、その内容を話した。
「……謎のゴーレム?」