145.脱出
俺たちの身体全体を包み込む謎の光。
その光は俺たちに魔法を発動できるようにする力を与えてくれた。
「ランス、魔法が……っ!」
どうやらソフィアも気づいたみたい。
原因は分からないが、俺たちとしては非常に嬉しい出来事。
「これで少しはまともに戦えるな」
使える魔法に制限はあるのかもしれないけど、使えないよりはマシだ。
それにコイツ相手だったら……
「ソフィア、俺に強化魔法を付与できるか?」
「は、はい! 多分出来ると思います!」
「じゃあ、頼む! 移動強化オンリーで!」
「えっ、移動強化だけでいいんですか?」
「ああ、問題ない。むしろ全てそこに力を注いでほしい」
この魔法を使える謎の光がいつまで続くか分からない。
それに攻撃を受けることで、強化されるのならば早急に決着をつける必要がある。
長く白兵戦をしたおかげで強化され続けているとは言っても、コイツの行動パターンやある程度の敏捷性などは理解できた。
身体も良い感じに適応して、温まってきたし。
それに一つ面白い策を思いついたのだ。
このチャンスを逃さないためにも、今できるありったけを叩きこむ。
それが、今俺が下した結論だ。
「俺の準備は大丈夫だ。頼む、ソフィア!」
「は、はいっ!」
ソフィアは俺の言う通り、移動強化魔法を展開。
俺に付与した。
身体が芯からみなぎってくる。
ソフィアの想いが俺の中にしっかりと入って来る。
「……行くぞっ!」
短剣を構え、ゴーレムに向かって一直線に突撃していく。
相手も簡単に懐を渡すまいと抵抗してくる。
だが、ゴーレムの動きは既に俺の脳内にある。
加えて移動速度が格段にアップしたためか、軽々と攻撃を避け、簡単に懐に入り込むことが出来た。
「よし、後は……」
俺はゴーレムの上半身と下半身の間の隙間に剣を差し込んだ。
ここまでくれば後は俺のありったけをぶちかますのみ。
ありったけというのはもちろん……
「さぁ存分に味わえ! 俺の魔力を!」
短剣を通じてありったけの魔力をゴーレムへと流し込む。
これも一応魔法の一種だ。
何かを媒介に自分の魔力を他人へと伝播させる。
考えた面白い策とは俺の持つ膨大な魔力量でゴーレムを内部から破壊しようというものだった。
戦いを通じてこのゴーレムの外壁は中々崩れるようなものじゃない。
いくら魔法を使えるとはいえ、崩すのは容易ではないだろう。
もし仕留めきれなかったら、逆に強化に繋がってしまうからリスクも高い。
だからこそ、外部からではなく、内部から……という考えに至ったわけだ。
俺はゴーレムにありったけの魔力を解き放つと、案の定ゴーレムに異変が生じた。
ぎゅるるるるっと機械的な音を奏で、遂には完全に停止した。
「……ふぅ、終わったか」
「やりましたね、ランス!」
ソフィアが嬉しいそうに駆け寄って来る。
「ありがとう、ソフィア。最高の支援だったよ」
「いえ、わたしは何も……」
照れるソフィアに俺は笑顔で返答する。
ホント、最後の最後で運が味方してくれた。
でも、これで全てが終わったわけではない。
「先を急ごう。ドロイドさんたちが待ってる」
「そうですね、行きましょう!」
戦いの疲れを癒す暇もなく。
俺たちは外界へと繋がる扉を潜るのだった。