141.脱出を目指して
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「ドロイドさんたち、大丈夫でしょうか……」
「分からない。でもドロイドさんなら何とかしてくれるよ。あの人、噂じゃ結構なやり手だったみたいだし」
男と怪物をドロイドさんたちに託してから。
俺とソフィアはこの空間からの脱出を目指して、扉へと続く道を走っていた。
何度か背後の方でとてつもない爆発音が俺たち二人の耳に入ってくる。
その音を聞くたびに、ソフィアは何度も後ろを振り向いていた。
ソフィアが心配するのも無理はない。
本来民を守るべきはずの自分が真っ先に背を向けることになったのだから。
「ですが……」
ソフィアは未だ心配そうに横目で背後を気にしていた。
いつもは冷静な彼女にしては珍しい。
流石の彼女でも他人の身を犠牲にしてまで守られることに罪悪感を感じているのだろう。
仕方ないとはいえ、彼女の表情にはそんな感情が強く前に出ていた。
「ソフィア」
「はい?」
「ドロイドさんならきっと大丈夫だよ。俺はあの人がこんなところで簡単にくたばるような人には思えない。もちろん明確な根拠はないけれど、何となくそう思うんだ」
去る直前、俺はドロイドさんの表情を一瞬だけ見ていた。
その顔は絶望の色に染まったような感じではなく、むしろ望んでいたかのような感じだったのだ。
この非常事態を望んでいた……だなんて、当然思ってはいないと思うけど、やけに輝いていたというか……
まぁ俺は人の心が読めるわけではないし、むしろ他人の考えに鈍感な方だから自信はない。
自分で言うのもアレだけどね。
「それに、今の俺たちにはすべきことがある。俺たちは俺たちのやるべきことを完璧にこなすんだ。この街を、国を、世界を守るために」
「……そう、ですね! ランスの言う通りです。ごめんなさい、わたしとしたことが弱音ばっかり吐いてしまいました」
ソフィアは自らの頬をパンパンと叩く。
と、同時にキリッとした眼差しに変わった。
「やっと、いつものソフィアに戻ったな」
「いつまでも弱音は吐いていられませんからね」
「別に弱音を吐くことは悪いことじゃないさ。ソフィアだって人間だ。むしろそうやってすぐに気持ちを切り替えられる方が凄いよ。流石は未来の国王陛下様だ」
「ふふっ。気が早いですよ、ランス。まだわたしはお父様の足元にも及んでいません。この国を導いていくにはまだまだ未熟者です」
「そうかな。俺は今のソフィアでも十分人の上に立つ能力があると思うけど」
「ふふふ、ありがとうございます。でも今はランスが言った通り、わたしたちのすべきことをしましょう。この国が無くなってしまったから、意味がありませんからね」
「だな! 絶対に守ろう。この国の未来の為にも!」
「はい!」
決意を固め、俺たちの歩みは力強くなっていく。
続く一本道を走り、お互いの心拍数は増していく。
たまに振り向いてみるが、奴らが追って来る気配はない。
多分、ドロイドさんたちがしっかりと足止めをしてくれているのだろう。
(よし、もう少しだ)
扉が大きく見えてくるにつれて俺たちの走るスピードは上がっていく。
だが扉まであとほんの少しと迫った次の瞬間――
「――――!」
上空から盛大な爆発音のようなものが鳴り響く。
同時に空間に亀裂のようなものが生まれ、中から巨大な何かが俺たちの姿をじっと見ていた。